悲しみを拭うその手は、 | ナノ





話が終わったころ、サスケとナルトが何やら話していることに気づいた。



「よォ……ケガはねーかよ、ビビリ君。」

「!!」



ナルトが今にも襲い掛からんとしているのをカカシがおさえる。



「ナルト!ケンカは後だ、こいつらの爪には毒が塗ってある。お前は早く毒ぬきする必要がある。傷口を開いて毒血をぬかなくちゃならない……」

「!?」

『おとなしくしてろ、ナルト。毒回るのが早くなるぞ』



カズハの言葉を聞いて一気に青ざめるナルト。



敵の忍二人を木にくくりつけ囲む。



「こいつら霧隠れの中忍ってとこか……。こいつらはいかなる犠牲を払っても戦い続けることで知られる忍だ」

「……なぜ我々の動きを見切れた」

「数日雨も降っていない今日みたいな晴れの日に水たまりなんてないデショ」

「……」

「……あんたそれ知ってて何でガキにやらせた?」

「私がその気になればこいつらくらい瞬殺できます…が……私には知る必要があったのですよ…。この敵のターゲットが誰であるのかを…。それに、気づいてた子もいましたし」



カカシがカズハを見て微笑む。



「どういうことだ?」

「つまり…狙われているのはあなたなのか、それとも我々忍のうちの誰かなのか……という事です」

「……」

「我々はアナタが忍に狙われてるなんて話は聞いていない。依頼内容はギャングや盗賊などただの武装集団からの護衛だったはず……」

「………」

「これだとBランク以上の任務だ……。依頼は橋を作るまでの支援護衛という名目だったはずです」

「……」



ナルトが小声で聞いてきた。



「どういうことだってばよ?」

『敵の忍が誰を狙っているのかっていうのは重要だ。それを知るためにカカシ先生はわざとやられたふりをして誰が狙いなのかを見ていた』

「うんうん」

『で、結果。狙われているのはタズナさんだと判明』

「……で?」

『通常、Cランク任務ってのは忍同士の戦闘はない任務なんだよ。そしてこの任務は特に支援護衛っていう名目だったからな』

「……だと、どうなるんだ?」

『つまり……』





「敵が忍者であるならば……迷わず高額なBランク任務に設定されていたはず……何か訳がありみたいですが依頼でウソをつかると困ります。これだと我々の任務外ってことになりますね」




『ってことになる』

「………」

「この任務、まだ私達には早いわ……やめましょ!ナルトの傷口を開いて毒血を抜くにも麻酔が要るし……。里に帰って医者に見せないと…」



サクラがカカシに訴える。もっともな意見だ。



「こりゃ荷が重いな!ナルトの治療ついでに里へ戻るか。」

「!?」



しかし、その瞬間だった。




ザクゥッ!!




「「「『!?』」」」

「ナルト、何やってんのよ!アンタ!!」




ナルトが自分の傷ついた手の甲にクナイを突き刺した。この行為には誰もが驚いた。手の甲からは血がしたたり落ちる。ナルトは自らの手で毒抜きを行ったのだ。あまりにも手荒ではあるが。



「俺がこのクナイでオッサンを守る。任務続行だ!」



ナルトの眼には強い意志があった。

迷いも穢れもない純粋な目。


しかし、カカシが水を差す。



「ナルト……景気よく毒血を抜くのはいいが……」

「……」

「それ以上は……」

「……?」

「出血多量で死ぬぞ?マジで……」

「……!!ぬぉぉ!ダメ!それダメ!こんなんで死ねるかってばよ!!」

「ちょっと手、見せてみろ」

「ナルト!アンタって自虐的性格ね。それってマゾよ!」



呆れたようにサクラが言う。



『ん。カカシ先生。見して』

「あぁ」

『……毒血はなさそうだな。思ったよりも傷も深くないし…うん。包帯巻いとけばいいだろ』



カズハは慣れた手つきで包帯を巻いていく。



「慣れてんだな」

『まぁな』




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