悲しみを拭うその手は、 | ナノ





時刻は昼を少し過ぎたころ。

第七班のメンバーは全員演習場の丸太の前へと集合していた。



『なんでナルトは丸太にくくりつけられてんだ?』

「あはは……」



カカシとカズハ以外のメンバーはひどく疲れ切った表情をしていた。



「この演習についてだが……結論から言えば、アカデミーに戻る必要もないな、お前ら」

「え?」

「それじゃあ……みんな……」



カカシは目を細め、笑みをたたえる。



「あぁ…カズハ以外は忍者をやめろ!」

「……!」

「そんな…カズハ君以外って…」

「それってば…どういうことだってばよ!!」



微笑んでいたカカシも笑みをやめ、真顔に戻る。


発せられた言葉は、どれも冷徹さが含まれていた。



「お前ら、忍者をナメてんのか?なんのためにチームに分けて演習やってると思ってるんだ!…お前らはこの演習の答えをまるで理解していない」

「じゃあなんなんだってばよ!この演習の答えって!」

「……しょうがない…カズハ」

『…チームワーク。それが答えだ』



3人はカズハへと視線を集めた。



「そうだ。これは鈴を通し、わざと仲間割れを仕組んだ演習。この条件の下、自分の利害に関係なくチームワークを優先できる者を選抜するのが目的だったんだ」



カカシは続けた。



「任務は班で行う。確かに、忍者にとって卓越えした個人技能は重要だ。だが、それ以上に重要されるのがチームワークなんだよ」

「カズハ君は…チームワークを考えて行動していた…ということ?」

「あぁ…お前ら、一度はカズハに助けられてるんじゃないのか?」

「「「!!」」」

『声かけたけどダメだったな。悲しかったぜ?』



カカシは後ろの石碑を見て言い放った。



「これを見ろ。この石碑に刻まれている名前を…これは、里で英雄と呼ばれる忍者達の名だ」

「それだってばよ!」



ナルトが大声を張り上げる。



『ナルト…?』

「オレ、決めた!オレもそこに名前を刻むんだもんね!英雄、英雄!」

『!やめろ!!ナルト!』

「…カズ…ハ?」

『お前は……刻むな。この石碑に、名前なんか……』



ナルトが何か言いかけたが、それを拒むようにカカシが話し始めた。



「ただの英雄じゃない。これは、任務の最中に殉職したやつらだ」



それを聞いたナルトは何も言えなくなり、うつむく。



「これは慰霊碑。この中にはオレの親友の名も刻まれている……カズハの…家族もな」

「「「!!??」」」

『それは言わない約束だぜぇ?せんせー』

「…悪いな、カズハ」

『いえいえ』

「お前らにもう一度だけチャンスをやる。」

『じゃあ、これは返さなきゃな』



カズハは持っていた鈴をカカシへと渡した。



「お前……鈴を持っていたのか!?」


サスケが目を見開き問うた。


『まぁな』

「………ッ」

「もう一度参加するのか?」

『誘えきれなかった俺にも非がある。だろ?』

「フッ…好きにしろ」

『ありがとうございます』

「じゃあ昼からもう一度鈴捕り合戦だ。挑戦したい奴だけ弁当を食え。ただし、ナルトには食わせるな」

「え!!!」

「ナルトに食わせたら、そいつをその時点で失格にする!」



カカシは再び凄みのある声で言った。



「いいか、ここでは俺がルールだ。分かったな。カズハ、一度お前は俺とこい」

『…わかった』




カズハとカカシは姿を消した。





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