悲しみを拭うその手は、 | ナノ





「よし!12時セット完了」

「「「?」」」



切り株の上に置かれた目覚まし時計。

時刻は11時前を指している。


チャリンッ!と綺麗な音を立てたのはカカシの手に持たれた鈴。


「この鈴を昼までに俺から奪うのが今日の課題。んで…昼までに俺から奪えなかったやつは昼飯抜き!丸太に縛り付けたうえ…目の前で俺が弁当食うからww」

「「「(朝飯食うなって…そういうことか…)」」」

「鈴は一人一つでいい。ということで必然的に一人は丸太行きになる。で、鈴を取れなかったやつは任務失敗!失格だ」




つまり……12時までにカカシから鈴を奪えば任務成功で、弁当が食べられ、そのうえ下忍にもなれる。


しかし、奪えなかった場合、任務失敗。

丸太に縛り付けられたうえに、弁当が食べられず、しかも目の前で弁当を食べられ、挙句の果てには、アカデミーへと逆戻り。

みんなの顔に力が入る。


しかし……


『(このサバイバルでの真の目的は…そこじゃない。)』



一人、違うことを考えていた少年がいた。



「(スズランはきづいてるな…)」

『(でも、最初からそんなことを言っては、みんなのためにならない…私は手助けに回ろう)』

「あぁ、手裏剣使ってもいいぞ。殺す気で来ないととれないからな」

「で、でも危ないわよ先生!!」


“殺す”という単語に反応したサクラが声を上げる。

下忍候補生の彼女らにはまだ、殺しなどわからないのだ。


「そ、そうそう!黒板消しも避けられねぇクセにぃー!本当に殺しちまうってばよ!」


そう声を上げるナルトの声にも、怯えを感じられる。

そんな姿を見てカカシは呆れた顔をする。


「……世間じゃさぁ、実力のない奴にかぎって吠えたがる……。ま、"ドベ"はほっといて、よーいスタートの合図で」


その言葉で反応した一人の少年――…ナルトだ。


『バカ野郎ッ!』


明らかな挑発に煽られたナルトはクナイを持って走り出した。


だが、


「え?」

「そうあわてるなよ…まだ、スタートとは言ってないだろ?」



カカシは一瞬でナルトの背後に回り込み、ナルトのクナイを持っている手を持ち上げ、ナルト自身の後頭部へと向けていた。


「(速い…!)」


皆の驚いた顔を見て、カカシは不敵に笑って続けた。


「やっと俺を殺る気になったようだな…ククッ…ようやくお前らを好きになりそうだ…」





「じゃ…始めるぞ…。よーい…スタート!!」



そうして、5人はばらばらに散らばっていった。







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