悲しみを拭うその手は、 | ナノ





時刻は丑の刻。普通の生物は寝静まっているはずのこの時間帯に、ある森では、騒がしく…でもそれは、それは静かに、戦闘が行われていた。

響くのは、白く光る刃が肉を裂き、血飛沫が広がり、断末魔の叫びだけ……。



『任務完了…』



そう声を発した女性の顔には猫を模様したであろう面がついており、月光に照らされたその面には、相手のだろうと思われる血が、付着していた。


それを拭うわけでもなく、彼女は、月を、見上げた。



『通りで、明るかったわけだ……』



夜風によって彼女の黒髪は揺れる。



『明るいよな…月も…私を…照らしてくれるのか…?』



彼女は月へと語りかける。



『いいんだ…私は光を持ってはいけない』



面越しの彼女の眼は…光を……持っていなかった。














時刻は午前4時。


集合時刻よりも1時間も早いこの場所に、一人の少女が現れた。

ほんの1時間前に“任務”を終わらせた彼女は、その時よりも幼い、本当の姿で現れた。


『早いかな……でもまぁ、のんびりしたいし』


そういって印を素早く結ぶ。


『口寄せの術!』



ポンッという音と白い煙から現れたのは一羽の“鷹”


「いきなりどうしたよ?スズラン」

『久しぶりだね。葛』

「あぁ…最近はどうだ?」

『いつも通りだよ。あ、任務で今下忍』

「ほう…だからそんなものつけてるのか?」 

『うん』



そういって首についている黒いチョーカーに手を伸ばす。


『チャクラ制御装置だって。最大でも上忍に成り立て程度のチャクラしか出せないって』

「大変だな。総隊長殿」

『え?嫌味?』

「ククッ…お前、最近笑えてるか……?」

『さぁ?意識しないから。でも、』

「でも?」

『…サスケが…そばにいるから』

「うちはの小僧か…同じ班なのか?」

『うん』

「辛くないか?」

『え?』

「近くにいるのに…お前は自分だと、名乗り出せないんだろ?辛くないか…?」

『確かにつらいよ。残酷だよね……きっとサスケは気付いてないだろうし。私のことどう思ってるんだろ……死んだとでも思ってるのかな…?でもね、葛。近くでサスケの元気な姿を見れるのは、とっても嬉しいんだよ』

「そうか…おっと誰かくるぜ?」

『うん…話し相手になってくれてありがと』

「いいぜ、いつでも呼べ」


そういって葛は姿を消した。


『私も、変化しないと…』


そう言って少女は、少年の姿へと変わった。


「…早いな」

『サスケこそ』


そして現れたのはサスケだった。朝早いもののその顔はしっかりとしている。


「誰かいたのか?」

『どうして?』

「誰かと話してるような声がした」

『気のせいだ』

「っ」

『サスケ?どうかしたか??』

「いや……なんでもない(笑った顔が…スズランそっくりだ……。でも相手は男だぞ?なんで俺は照れてるんだ!)」

『あ、サスケ』

「な、なんだ」

『あくまで俺の見解なんだが……たぶん、カカシ先生、遅れてくるぜ』

「は?」

『あの人遅刻魔で有名なんだよ。だから集合時間には100%来ないと言っても過言じゃない』

「…あいつ、信用できるのか…?」

『まぁ、実力は本物だから!ま、ということで俺寝るわ!』

「…は?」

『あんま寝てなくてさ!来たら起こして!よろしく!』

「(なんなんだこいつ…)」

「おはよう…サスケ君…」

「◆○×ДΔ♂…」

「あれ…カズハ君寝てる…?」

「あぁ…こいつが言うにはあいつは遅れてくるから寝るだそうだ」

「へぇ…フフッ…!カズハ君って寝顔かわいいんだ!」

「……」




それから数時間後、太陽は既に昇り真上へと着実に近づいていた。そんな時だった。



「やー、諸君、おはよう」

「「おっそーい!!」」


大遅刻をしているにもかかわらずのんきな様子で現れたのははたけカカシだった。


「あれ?カズハは寝ちゃってる…?」

「おい、てめぇ、起きろ」

『ん…あ、カカシさんおはようございます』

「マジで爆睡してたみたいね」

『…?』



寝ぼけたスズランはいつもの調子で『カカシさん』と呼んでいたのはここだけの話だ。



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