悲しみを拭うその手は、 | ナノ





場所は屋上へ。

俺たち4人は段差に座り、柵に寄りかかるようにしてこっちを見ているカカシさん。


「じゃあまず、自己紹介からしてもらおうか」

「自己紹介って何を言えばいいんだってばよ」

「まぁ……好きなもの、嫌いなもの、趣味とか、将来の夢とか……」

「じゃあさ!じゃあさ!まずは先生がお手本を見せてくれってばよ!」

「そうよね、見た目怪しいし。ね?カズハ君!」

『そ、そうだな』


顔の半分以上をマスクで隠していれば確かに怪しいけれど、担当上忍として目の前にいるのに、こうもあからさまに怪しいとなると……今後が不安になる。


「俺か?俺の名前は、はたけカカシって名前だ。好きなものも嫌いなものもお前らに教えるつもりは、ない。将来の夢って言われてもなぁ……。趣味はまぁ……いろいろだ!」

「結局わかったのって」

「名前だけじゃない?」


その通りだ。


「じゃあ、次はお前らだ。じゃまずお前から」


そう言ってカカシさんはナルトを指さす。


「俺さ俺さ!うずまきナルト!好きなものはカップラーメン!もっと好きなのはイルカ先生におごってもらった一楽のラーメン!嫌いなものはお湯を入れてからの三分間。趣味はカップラーメンの食べ比べ!で将来の夢は、火影を越す!んでもって里のやつらに俺の存在を認めさせてやるんだ!!!」


やっぱり面白いとそう思った。

里の人たちに認めてもらうことが夢。彼らしいと、そう思った。


「じゃあそこの女の子」

「えっとぉ春野サクラです。好きなものはぁ…てゆーかぁ…好きな人はぁ…」


そう言ってサスケをちらちらとみている。

サスケは…気づいているのか、それとも気づいていないふりをしているのか、定かではないけれど。


「で、趣味っていうかぁ………将来の夢はぁ…キャーーーー!」

「…で?嫌いなものは?」

「ナルトです」


サクラの言葉にあからさまに落ち込むナルトが目に入る


「次」

「名はうちはサスケ。嫌いなものならたくさんあるが、好きなものは………特にない。それから、夢なんて言葉で終わらせる気はないが、野望はある!!…一族の復興と、ある男を…殺すことだ」

『!』


驚いた、といえば嘘になる。思ったとおりだと、思った。でも、思いたくなかった。

復讐に囚われてしまった彼を見たくなかった私がいるのだ。


「ん…じゃ、最後」

『俺の名前は白羽カズハ。好きなものは団子。嫌いなものは団子以外の甘いものかな?あとは蛇。趣味は散歩と修行。将来の夢は…一流の忍者になって木の葉の里のために働くこと』

「よーし、四人とも個性豊かで面白い。明日から任務やるぞ」


任務、と言ってもこのメンツで最初にやることはもう決まっている。


「はっ!どんな任務でありますか?」

「まず、この5人でできることをする」

「なになになに?!なーに??」

「サバイバル演習だ」

「サバイバル演習?」

「任務なのにどうしてサバイバル演習なんかやるのよ!演習ならアカデミーのときにさんざんやったわよ!」

「ただのサバイバル演習じゃない」


そう…このサバイバル演習はただのサバイバル演習じゃない。


するとナルトが、


「じゃあさ、どんな演習なの?」


するとカカシは下を向いて笑い出した。


「ちょっと!なんで笑ってんのよ」

「いや、俺がこれを言ったらお前ら絶対ひくから!!」


すると声のトーンを変え、低い声で続けた。


「卒業生28名中、下忍として認められるのはたったの9名または10名。残り18名または19名は再び、アカデミーに戻される。つまりこの演習は脱落率66%以上の超難関テスト……」


するとナルト、サクラ、サスケの顔が一気に強張った。


「ほらほら、ひいたー!!」


するとナルトが叫んだ。


「んなバカなぁーー!! んじゃあ、んじゃあ、何のための卒業試験だったんだってばよぉ!!」

「アレか?下忍になる可能性のあるものを選抜するだけ」

「んぐっ!なぁーにぃーー!!?」

「じゃま、そんなわけで明日は演習場でお前らの合格・不合格を判定する。忍道具一式持って、演習場に朝5時に集合!!」







3人が解散してもなお、私はその場にいた。



『カカシさん、聞いてないですよ?私』

「んーー?なにが?」

『あなたが担当上忍なんて、私、いらないじゃないですか』

「だって、びっくりする顔がみたかったんだもん」

『だもん。じゃないですよ。まったく…』

「にしても…ずいぶんと美形に化けたね」

『え?意識してなかったです。』

「はは、そっか。今日はどうするの?」

『私が暇そうに見えます?』

「全然?」

『あの人も人使いが荒い…。ま、いいんですけど。多分、長期任務中もありますんで』

「え?本当に?それはいくらなんでもなぁ」

『じゃあ、カカシさんから頼んでくださいよ三代目に』

「遠慮してくよ」

『そうですか、残念。では』

「うん」





闇に生きるものに、


安息なんてものはない。



私はその道を選んだ。



いや、



それしか、



道がなかったんだ。









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