幼馴染の彼は根が真面目で、いくら道を間違えても必ず戻ってくるような人だ。
小学校のころから始めていたアメフトで彼はエースだった。その頃からすごく身長が高くて、私は生まれてから彼に身長で勝ったことは一度もない。周りの友達から受ける眼差しは尊敬で、そんな眼差しを受けている彼に私は嬉しくなった。
そんな彼は中学にあがると、アメリカへと留学した。
話には聞いていたけれど、実際あんなに大きかった存在が居て当たり前だった日常が当たり前じゃなくなって寂しくなったのを覚えている。アメリカに行った当時はメールをしてくれたけれど、いつからか連絡を取り合わなくなって、愛想をつかされたって思ったときもあった。私には取り柄がなかったから。ただ彼の後ろを付いていくだけ。それだけ。だから私は必死でアメフトの勉強をした。そして、アメフト部にマネージャーとして入った。
彼が帰ってきたのは中学3年生のとき。その時の彼は、最後にあった時よりも遥かに大きくて、大人っぽかった。彼はすぐに私のところに来てくれた。そしてアメリカでの話を聞かせてくれた。実力さを思い知ってグレて、その頃から連絡を取らなくなったこと。でも自分がどんなに惨めで分かっていなかったかを思い知って練習に明け暮れたこと。そして、ミドルスクールでエースになったこと。自分のことじゃないのに誇らしくなった私がいた。
そして彼はアメフト部に入った。
そこからは怒涛だった。時期なんて気にせずに部員を集めて、背の高いチームを作った。すぐに季節は巡って、秋大会。
負けない自信があった。でも、三回戦で私たちの夢は散ったのだった。
いろんなことがあった。二年生になって、三年生になって、もう卒業。マネージャーになったこと、後悔していない。むしろ、よかったって思ってる。いつからか彼を、支えられているって思えるようになって。嬉しかったから。
3年生になり進路を決めているとき、私は彼に呼ばれた。
『どうしたの、駿?』
「俺、卒業したらもう一度アメリカに行こうと思う」
『え?大学、こっちのじゃないの…??』
「あぁ」
『……そう、なんだ』
「で、だ」
『…??』
「……名前に、付いてきて欲しい」
『!』
「無理にとは言わねぇけど…お前がいると、俺、嬉しいし…」
『私、ついて行っていいの……?』
「あぁ。来て欲しい」
『行く!私、駿のそばにいたい!!』
「決まりだな」
私は彼に抱きついた。
彼はよろけることなく私をしっかり抱きとめてくれた。でも彼の耳が赤くなっていたのはまた別の話!
そして私と駿は一緒にアメリカへと渡った。
空を渡る
私は今、彼の隣に立っている。
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