三日前から冬島の気候へと入ったモビー・ディック号の船内は暖房を最大まで上げても寒かった。食堂は人口密度のおかげなのか暑いくらいだけれど、個人スペースは私にとってかなり寒かった。
私は布団を3枚掛けて眠りについたわけだけれど、寒くて深い眠りにはどうしてもつけなかった。
『うー……』
布団から出るのも躊躇われたが、私はどうにか布団から出て、ある部屋へと足を向けた。
―…コンコンッ
時間帯にして夜中。部屋の主が起きているとも思えないがそこはマナーでノックをする。
『入るよー……』
静かに扉を開ければ、ベッドの上が盛り上がっているのが見える。私は物音を立てないように近づいた。
布団からは頭だけが出ている。私はその布団を少しだけめくり、そこに自分の体を潜り込ませた。
『あったかい……』
自分の布団とは比べ物にならない温かさに私は笑みをこぼした。
温かさの源であるこの部屋の主に私は体をすり寄せた。
『きゃ……!』
肌に触れた瞬間抱き寄せられた私の腰。そこには彼の鍛え上げられた腕が回っていた。
『起こしちゃった……?』
恐る恐る声をかけるが返事が返ってこない。
ゆっくりと顔を上げると、瞼を下ろし、安らかな寝息を立てている彼の顔があった。
『…無意識?』
どうやら無意識での行動だったらしい。
私は心地よい温かさに身をあずけ、瞼を下ろした。
君と僕の熱伝導率
(んー…って、名前!?な、なんで俺の布団の中に?!) (むにゃ……えー、す) (……生殺しだ)
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