『髪、切るんですか?』
「あぁ」
時代は変わった。
いや、時代が変わったのか私たちが遅いのか。それは当事者である私にはわからないけれど。
これからの戦いのためにと、洋装を用意した新選組。そしてそれに合わせて髪の毛を切るのだとか。
『勿体無いなぁ……』
「あ?」
『こんなに綺麗なのに……』
目の前にある土方さんの黒髪は艷やかで真っ直ぐ。所謂烏の濡れ羽色の髪の毛。それはまるでどこかのお姫様のように綺麗なのだ。
「元々邪魔ではあったしな」
『で、私が切れと?』
「あぁ」
すると、スルリと髪紐を取り払うと、その黒髪は重力に逆らうことなくパサリと広がった。
『どのくらいまで?』
「任せる」
『……』
私は髪結いの鋏を取り出し、恐る恐る髪の毛へと通した。
シャキシャキという小気味いい音と共に地面へと落ちていく黒髪。
『……はい』
「ありがとよ」
振り向いた彼は、彼であって彼でなくて。
でも、すごく格好よかった。
涙を吸い取った紫
また戦いが始まるのだ。
Title by ポケットに拳銃
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