薄暗い箱の中で人々がひしめき合い熱狂する。薄暗い中での明かりは照明と呼ばれるもので、それが照らすのはひしめく人ではなくステージの上の主役。


此処はライブ会場。といっても大きいところではなく、学生やできたてのバンドが練習の一環として使うような会場だ。

それでも設備は中々のもので家や学校で練習するよりも何倍もいい環境であるのもまた確か。それに間近でお客の反応もうかがえる。




そんな会場でさえ、終わってしまえば寂しいもので熱気は一気に冷める。

そんな空間に人影が2つ。



『今日も見に来てくれたんだ』

「フー、まあな」

『ありがと、赤羽』



ひとりはステージの上に、もう一人はステージの下。ステージの上にいるのは少女で、ライブの後の為汗が滴っている。赤羽と呼ばれたステージ下にいる青年は少女を見あげながらかけていたサングラスをはずした。



「相変わらず、いい音楽だ」

『赤羽に言われると嬉しいなぁ!本当に、今日も盛り上がってよかったよ』

「人気も相変わらずだな」

『えへへ!あ、ねぇ赤羽。新しいシールド買いに行きたいんだけど一緒にいかない?あ、忙しいんだっけ?アメフト』

「いや、忙しいが一緒に買い物に行くくらいの時間は作れる」

『やった!いつもありがと』

「フー…俺も、そう言ってもらえると嬉しい」



そして少女はステージから飛び降りる。今まで少女の方が高かった身長が、青年の方が上になる。



『赤羽』

「なんだ、名前」

『今度、私がアメフト見に行くよ』

「フー…それは負けられないな」

『かっこいい赤羽、見せてよね』

「そうしよう」



そして二人は笑いあった。




2つのビート




重なり合う音楽は、

綺麗なハーモニーを奏でる。

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