日本の四季は明瞭である。
その中でも六月。
所謂、梅雨の時期だ。
日本全土で雨が降りやすく、ジメジメとしているこの時期。
そんな中でも京都の町で新選組は巡回を行っていた。
今日は本来非番である名前だが、急用で遣いを頼まれたのだった。
行きは晴れていたのだが、用事が終わるころには降り出していた雨。
『走って帰ろうか、止むの待つか……でも、止まないだろうな……どうしよ』
ただでさえ男所帯の新選組。
できるだけ濡れて帰るのは避けたいと名前は考えた。
……信用していないわけではないのだが。
濡れて帰っても風呂に入ればいいのだが、今の時間帯ではまだ準備が為されてないだろう。
『諦めて普通に帰ろう……』
そうして名前は雨に濡れながら帰路へとついた。
しかし、
「苗字?」
後ろから声をかけられ振り向くとそこには、新選組三番隊組長、斎藤一が傘をさし立っていた。
『あ…斎藤さん』
「なぜ傘も差さずにこんな街中を?非番ではなかったのか?」
『急用で遣いを。行きは降ってなかったんですよ。油断しました』
「そうか。だが、それ以上濡れてもらっても困る」
『え? さ、斉藤さん!?』
「少し狭いが……無いよりはましだろう」
『あ、え、と……』
斎藤は名前の腕を引っ張り自分の傘へと引き入れたのだった。
「……どうした」
『えと…さ、斎藤さんの肩口が濡れちゃいますよ…?』
「これくらい、なんでもない」
『そ、そうですか……』
「それよりも……お前に風邪をひかれた方が困るからな」
『えっ!』
「帰ったら風呂に入れ。いいな?」
『はい……』
素直に。
貴方の優しさが、
うれしかった。 [*前] [栞] [次#]
|