一人暮らしをするには少し広かったこの部屋。

荷物整理も大変で、荷物整理している間に見つかるものの数々にいちいち感動なんかしちゃって。少しだけ離れた距離で手伝ってくれてる彼に「うるせぇ」っていわれちゃってたり。



『見てみて!ほら、アルバム!』

「テメー、アルバムなんか作ってたのか?」

『んー、なんか成長が嬉しかったから。だってあんなだったのに……』

「ケケケ、そりゃそーだ」



ほんの少しだけ埃を被ったそれは、紛れもない“あの頃”の思い出で。

私にとっても、彼にとっても大切な思い出。



「どれどれ?てめぇの変顔探しでもすっか」

『ちょ!そういうことします!?』

「ケケケ」

『あーもう……』



写真に写るソレは、赤い。屈強な男たちがVサインしてたりとか…



『懐かしいね……』

「なに辛気臭ぇこといってやがる」

『だって……』

「…ったく、泣き虫か?」

『泣き虫にしたのはアナタですー』

「否定はしねぇ」

『……一応、人生の節目だから』

「あぁ」



パタン、と音を立ててアルバムが閉じられる。表紙には“泥門デビルバッツ”の文字。



「だいたいの準備は終わったか?」

『うん。いらないものは思い切って捨てないと』

「必要なもんはもう買ってあるしな」

『だから、今日でサヨナラだね』



ダンボールが積み上げられた部屋を見渡してつぶやく。

見慣れたはずのそこが、もう見慣れない景色へと変わっていた。


窓から入ってくるオレンジ色の光は、何に邪魔されることもなくフローリングへと反射して部屋全体をオレンジ色に染め上げた。もちろんその光は、彼の金髪にも当たってキラキラ光っている。



『一日ってあっという間だね』

「一日だけか?」

『高校あたりから急加速』

「ケケケ、俺もだ」

『特に時の流れが早く感じた』

「あぁ」

『もうあの日から……』



遠いようで、それでも未だに鮮明に思い浮かぶあのホワイトクリスマス。

私は窓辺に立ち、窓から母校の方向を眺めた。



「見えねえだろ?」

『気持ちが大事なんですよ』

「名前」

『!』



急に名前を呼ばれて驚いて振り返ると、壁にもたれかかって座っている彼が手招きをしていた。私はそれに従い近づく。


すると急に腕がつかまれ引っ張られる。


気が付けばそこは彼の腕の中で。



「何黄昏てんだよ」



耳元で彼の声が響く。



『だって……』

「なんだ?ナントカブルーか?」

『ち、ちがう……と思う』

「…心配すんな。手放す気ねぇから」

『っ!』

「名前……」

『…妖一さん………』

「ケケ……」









あの時であったのはきっと偶然じゃない。

今こうして一緒にいられることも。



今までの大切な思い出は、これからを作るための道だった。

これから共に歩むための。


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