船長室で船長ドレークはひたすらペンを走らせていた。
昔から……そう、海軍だったあの時から生真面目な人だったが、今も変わらず生真面目。
でも、そんな彼だから、海軍を裏切り海賊になんかになったんだと思う。
『船長』
「ん?なんだ?」
海賊の船長になってから彼のことは“船長”と呼ぶようになった。最高の敬意を払って。
そんな愛称で呼んでみたのはいいものの、返事をしてもペンを走らせる手は一切とめない。
『コーヒー、いかがですか?』
「あぁ、貰おう」
特別何も用事があったわけでもなく名前を呼んだので、目に入った空のマグカップを使った。
『どうぞ』
「ありがとう」
部屋に広がるコーヒーの香り。
耳に届くのは紙の上をペンが走る音のみ。
「……名前」
『え、あ、なんですか?』
「俺の顔になんかついているのか?」
『え?』
「さっきからずっと見られていたからな」
どうやら無意識に船長を直視していたようだ。
『いえ、べつに何もついてないですけど……』
「けど?」
『えっと……その…、船長に見とれてました』
「っ……!」
『せんちょ?』
「……はぁ、ただでさえこの状況下で冷静でいるのも大変なんだが……」
『え?』
「惚れている女と部屋に二人きりで冷静さを手持つのは大変なんだよ、名前」
『それ、本当……?』
「嘘なんかついてどうする」
『わ、たしも、好き……』
「嘘じゃないだろうな?」
『嘘じゃないです!誓います!!』
「クク、そうか」
愛しいXに誓うのはXへの愛
ずっと着いていきます。ドレーク。
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