『っ……!』
草木も眠る丑三つ時。
それは彼らの活動時間に他ならなかった。
新選組が抱える闇、羅刹。彼らはもう人間ではない存在となり、闇に生き、血を食らう存在となった。
そんな存在の一人に、彼がいる。
『さ、んなん、さっ……』
新選組総長であった山南さんだ。
彼は新選組の頭脳だった。学に置いては随一を誇った人。
でも、もう彼も人間ではない。
それでも私にとって彼は彼であった。
何も変わらないの。
「やはり貴方は最高ですよ、名前」
私は彼のことを愛している。
だからこそ、どんな彼だって受け入れられるし、どんなことを求められたって私はそれに応える。
そして彼は私の血を啜るのだ。
月に煌めく白い髪の毛に狂気を宿す赤い瞳。理性を失ったように欲しいままに私の首筋へと顔をうずめる。
何も怖くなかった。
寧ろ、彼が私を求めてくれているのだと思えばこんなに嬉しいことはなかった。
「……ありがとうございます、名前。では」
血を啜り終わればそそくさと自室へ戻る山南さん。
それでも私は彼が求めるがままに差し出し続ける。
いつか、彼が私の求めるものをくれるまで。
ただ愛が欲しいだけなの
そしてまた明日私は今日と同じように差し出すの。
Title by リコリスの花束を [*前] [栞] [次#]
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