雨の降りしきる戦場。血は乾くことを忘れ、雨と共に地面を流れ、大地を赤く染めていった。


私は今日この雨の降る戦場で、カイゼル様のお供をしている。


普段はアルケイン軍である私が何故カイゼル様のお供をしてるのか。

今回のこの戦場ではカイゼル様の直属軍の剣士がそれぞれ隊長を務め、いくつかの隊を作り攻略するらしい。がむしゃらに攻めるよりは確実な戦闘方法だ。

そのため、いつもカイゼル様の許にいる人たちが各隊の隊長を務めているため、急遽、私がカイゼル様のお傍にいることになったのだ。




視界に映る赤い髪の毛。剣を振るうさまは、あまりにも綺麗で、一枚の絵のように見えた。

しかしそんなことに思考をめぐらせ、体を止めるわけにはいかない。カイゼル様の動きを読み、援護するように矢を放つ。



「ハハッ!名前!腕を上げたか?」

『私も日々精進しておりますゆえ』

「そうか、まぁ俺様のおかげだな」

『フフ…そうでございますね』




そうして、確実に敵の数を減らしていった。





一通り敵を片付け、カイゼル様と目を合わせる。



「疲れたか?名前?」

『そうですね。多少は、この雨ですし……』



いまだ降りやまない雨は、少しずつだが確実に体力を奪っていた。


ふと、カイゼル様を見ると目線が私の手にあることに気付いた。



『カイゼル様?私の手が何か……?』

「震えているぞ、お前の手」

『え?あ…』


私の手は疲労と寒さで小刻みに震えていた。


いつもは手袋をしているのだが、つい先日、破ってしまったため替えがなく、やむなく今日は何もしてなかったのだ。


まさか、ここまで素手がきついとは……。


『早く新しい手袋買わないと……っ!』

「むぅ……冷たいな」

『カ、カ、カイゼル様ッ!?』


カイゼル様は私の手を握ったのだ。


「こんなに冷たくては弓も剣も使えたものではないだろう」

『え、あ……う……』


私はパニックになってしまい、言葉が出てこない。


「仕方がない。俺様が温めてやろう」


するとカイゼル様は私の両手を自身の両手で包み込んだ。


「……小さいな……」


私の両手はすっぽりとカイゼル様の両手に収まっている。


『そ、ですね……』


「こんなに小さな手で戦っていたのか……」


『カイゼル様……?』


ふっと、カイゼル様の手の力が強くなった。


「俺様についてくるか……?」


『!…もちろんですよ、カイゼル様』


「!……そうか」



いつの間にか私の手は、


温かさを取り戻していた。





冷たい手、暖かい心




私の冷たい手に伝わるのは、


貴方の手のぬくもりと、


貴方の心のぬくもりでした。



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