今日もこのオルガ大陸では、休むことなく戦闘が行われていた。


剣同士が交わり金属音をかき鳴らし、


矢が放たれ、大地へと突き刺さり、


魔術が野を焼き払う。




『アルケイン様、まだまだ続きそうですね……』

「そうですねえ……はやく帰ってワインが飲みたいですよ」

『そうですね』



戦場のど真ん中で繰り広げられる会話。

そんな二人の背後に数本の矢が飛んできた。


名前は手早く矢を放ち飛んできた矢を打ち落とし、アルケインは手に持っていた剣でなぎ払った。



『アルケイン様……今の程度なら私が全て撃ち落とせました』

「いいじゃないか、あまり名前には手を出させたくないな」

『私は貴方の部下です。将軍にあまりお手を煩わせたくは……』

「……ん?」



動きを止め、遠くを見つめるアルケイン。



『どうかなさったんですか……?』

「来ますよ、名前」



アルケインがそう言った瞬間、アルケインが見つめる先では大きな爆発が起きた。

規模も音も威力もケタ違いの爆発。



『!?』

「…この、魔導は」

『フェルト様でしょうかッ! かなりの数やられたかと……』

「……まさか、あっちの指揮官が今回フェルトさんだなんて……」

『厄介、ですね』

「いくよ、名前」

『はい!』



二人は戦線をかいくぐり、アルゴス側の拠点へと向かった。



「やはりフェルトさんでしたか。いやぁ…厄介ですねぇ」



アルゴス拠点の戦線で魔導用のロッドを構えるのはアルゴス将軍フェムト。

銀髪の長い髪が風で踊っている。



「お前は何年たっても変わらないな」

「それが取り柄ですよ」

「後ろにいるのは……名前か?」

『お久しぶりです、フェルト様』

「大きくなったな……」

『そう、ですか?』

「クククッ……さて、名前。俺がどこまで成長したかみてやる」

『いきます』



そういうや否、名前の手から放たれる矢。

しかしフェルトはそれをいともたやすく避けてみせる。



「ふん。腕は上がったようだが、まだまだだぞ?」

『くっ……いとも簡単によけられるなんて…!』

「あんまりうちの子、いじめないでくださいよ」

「いつからお前のになったんだ」

「最初から、ですかねぇ」

「調子に乗ると、消し炭にするぞ?」

「あぁ怖い、怖い……」

「名前……俺はお前の味方だ。いつでも頼ってこい」

『フェルト様っ!!』

「いったん引くぞ! さっさとしろ!」

「「「「はっ!!」」」」



フェルトがそう叫ぶと後ろに控えていた兵たちが引いていった。



「フェルトさん、名前のこと大好きですからね」

『フェルト様には、助けてもらってばかりで』

「敵ですけど、長年の友であり」

『そして、英雄』

「世間は狭いですね」

『アルケイン様……』

「でも、そんなフェルトさんのおかげで名前と出会えたんです。その点に関しては、フェルトさんにお礼を言わければ」

『私もです』

「じゃあ今度ふたりで行きましょう」

『そうですね』




貴方は友で、


それでいて、敵で。


それでいて、英雄。



英雄は敵でいて友である



それは、とても大きな存在。



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