すべての照明が落とされた暗い部屋の中で時計の秒針だけが響く。今が果たして何時なのかはわからない。


そんな中私は眠れずにいた。いくら寝返りをうっても眠気は一向に襲ってきそうにない。



『眠れないや……』



顔を右に向けるとそこには愛する人の寝顔。

普段見ることができないその顔を見れる幸せから頬が緩んだ。


それでも眠気はこない。



「…眠れねぇのか……?」

『あ、起こしちゃった……??』

「いや、喉乾いた」



そういうと上半身を起こしベッドの傍らに置かれているペットボトルに手を伸ばした。
キャップを開け、ゆっくりとした動作で口に含む。



「飲むか?」

『うん』



私も上半身を起こしペットボトルを受け取り口に含む。

少しぬるい液体が喉を通っていく感覚がやけによくわかる。



「寝れねぇの?」

『……うん』

「……こっち来い」




彼は私を引き寄せるとそのままベッドへダイブした。

痛みはないが少し驚いて顔を上げると目の前に彼の顔があって、自分の顔が赤くなっていくのを感じた。



「ケケケ、顔、赤いぜ?」

『う、だって……』

「……ずっとこうしててやっから寝ろ。明日辛いだろ?」

『ん……』




彼は自らの左腕を腕枕にしてくれた。

彼の体温が伝わってくる。


余りにも心地よくて、私はもっと彼に近づいた。彼の胸に頭をこすりつける。



「寂しかったのか?」



少しだけ笑いを含んだ声で問うてくる。



『……そうかも』

「やけに素直だな」

『ヒル魔のおかげ』

「いつもそうだとありがたいんだがなぁ?」

『うるさい……』



だんだん瞼が重くなってきた。

彼の体温、心音、香り。全てが私を安心させてくれる。



そして彼は空いた右手で私の頭を撫でてくれた。




『ん、ヒル魔……おやすみ……』

「おやすみ、名前」



私はこうして眠りについた。





眠れぬ夜に彼の腕の中で





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