夜の海は真っ暗で、何かが、大切な何かを攫って行きそうな、そんな感じがした。
でも、今日は少し違う。
夜空一面に、キラキラと星が瞬いている。
はぁ……と息をすれば白くなるような気温だが、なんだか、ずっと見ていたいような星空だった。
「風邪ひくよい」
『あ……マルコ隊長……』
肩には毛布が掛けられていた。
後ろにある船室……まぁ食堂なのだが……では今、宴の真っ最中だ。
『マルコ隊長…宴、いいんですか?』
「ん? いいんだよい、あんなの。毎日じゃないかよい」
『あはは、そうですね』
海賊は宴好きだ。
特にこの白ひげ海賊団は。
何かにかこつけて宴を開こうとする。
「そういうお前は、何してたんだよい?」
『星を、眺めていたんです』
「そういや今日の星は綺麗だよい……」
『はい……いつもはただ黒い海が見えていただけで、怖かったんですけど、今日は星が出ているので怖くないんです』
「夜の海が怖いのかい?」
『少しだけ……なにか……大切なものを攫って行きそうで…』
「大丈夫だよい」
『え?』
「お前の大事なものは俺が守るよい」
『隊長……』
隊長は私の頭をやさしく撫でた。
星空の下
不安も全部、
飛んで行った。
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