オルガ大陸でも北に位置するネクロス。
冬の季節にもなれば、そこは一面銀世界になる。城下町の家々は雪化粧を施され、輝いている。
今日も気温は氷点下となり、雪が降っていた。
しかしそんなものは関係なく戦争は続く。
今日、名前は城待機をしていた。
防具の上に厚手のコートを羽織り、城の周りを見回る。
ほかの国の兵がこんな寒い時期に攻め込んでくるのかな。なんてことを考えながら外を歩いていた。
「あれ?名前?」
『アルケイン様』
向こうから歩いてくるのはネクロスの将軍の一人であるアルケイン。そのアルケインの腕には一杯のワインボトルが抱えられていた。
『本日は城待機でしたか?』
「えぇ。だからワインセラーを整理していたんですよ」
『そうでしたか』
「名前も城待機かい?」
『はい。今は見回りを行なっています』
「そうか。寒いだろう?」
『はい……まぁ、寒いです』
そういう名前の口から吐き出された息は、白く染め上げられていた。
「ネクロスは冷えますからねぇ。まぁ、そのおかげでワインが美味しくなるんですけど」
『そうですね』
「ごめんね、名前」
『?』
「普通ならここで君の手を握るなり、君を抱きしめるなりして、君のことを暖めてあげるんだろうけど、生憎僕は君にあげる体温を持ち合わせていないから」
『アルケイン様……お気持ちだけで十分です』
「名前……城の見回りが終わったら僕の部屋においで。ホットワインを飲もう」
『はい』
氷点下のロマンチシズム
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