油断をしたと言ったらそこまでで、死番だったこの日私は見事に怪我をした。重症、ではないけれどしばらくは動けない日々が続くと思う。なんてことを考えながら、他の隊士の手を借りどうにか屯所へと帰りついた私。すると走ってきたのは山崎君。ごめんね。君も忙しい身なのに私なんかのために。



「まぁ、一週間ほどで復帰できると思いますよ」

『ありがとう。山崎君』

「いえ」

「おい!無事かっ!?」

『土方さん……』



障子を大きな音をたてて開いたのは土方さんだった。



「………元気、そうだな」

『まぁ、そこまで重症でもないですし…』

「…総司の野郎……」

「ですが、副長。一週間ほどはやはり安静に」

「そうか」

「では、俺はこれで」

「あぁ、すまなかったな」

「いえ」



そうして山崎君は部屋を出た。



「こんなとこ怪我しやがって……」



私が怪我をした場所は頬から鎖骨辺りにかけて、一直線にだ。

擦り傷みたいなものだが、こういうのの方が地味に痛いんだよね。



『問題ないですよ。腕じゃないんですから』

「テメェな………」

『はい?』

「一応女だろうが。顔に傷つけてどうすんだ」

『今更こんな年増だれも貰いませんよ。心配しないでください』

「いいのか?それで」

『まぁ、多少はそういうのもいいなと思いますけど。今更ですし。それに貰い手がいないんじゃそんなこと考えたって無駄ですし』

「……やるよ」

『え?』

「…俺が貰ってやる。心配すんな」

『……』

「……名前?」

『それ、本気で言ってます……?』

「あぁ。冗談でこんなこと言わねぇよ」

『…じゃあもらってくださいね?』

「あぁ」




傷物の貰い手




(私は幸せ者だ)




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