前世の記憶というのものを普通人は持たないらしい。
私は鮮明に覚えている。
あまりいい思い出だけではなかったけど、誇りはある。
あの時と同じ姓名で、あの時と同じ顔で、
どんな偶然か必然か運命か、
私にはわからないけど、
叶うのならば、
君に伝えたい言葉があります。
でも、君が今この時代に私と同じように生まれ変わっているなんて、そんな都合のいい話はないだろう。
考え出したらきりがなくて、
涙が溢れそうで、
『先生、気分が悪いので保健室いってきます』
教室を飛び出した。
青空の広がる屋上。
あの時と同じ色の青空。
景色は全然違うけど、
広がっている青空に、また、
泣きたくなった。
溢れる感情をどうしていいかわからなくて、
言の葉に出すしかなかった。
『総司……っ』
何度も、
『総司……っ!』
何度も、
『総司っ!!』
ふと、背に暖かさを感じた。
腰に回る細身の腕。
懐かしい、この感じ。
「何?」
耳に掛かる吐息と共に紡がれる言の葉。
「どうしたの?」
『あのね…』
「ん? 何? 名前?」
溢れる想いを、
やっぱり、
言の葉に乗せて、
また逢えたら「ありがとう」を君に
(ありがとう、総司)
(…僕も、言いたかったんだ)
((ありがとう))
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