集める情報が信じられないだなんて初めての経験だった。過去に集めた情報と最近集めた情報の差異が大きすぎる。
この膨大な情報あふれる社会で有益な情報を手に入れることは至難の業。私だって完璧ではないのだから間違いだってと言われてしまえばそこまでだけれど。
何が言いたいかというと、やはり直接会うことが一番だと思ったわけ。
あれこれデジャブ?
今日も今日とて晴天な東京都。赤いユニフォームは汗だくになりながら走り回っていた。私とそれから彼女はそんな彼らのためにドリンクを作る作業をしていた。
『この間は話をあわせていただけてよかったですよ』
「!」
先制攻撃というべきか。私から話を切り出した。
「よく言うわ。イレギュラー」
『私がイレギュラー?そっちはどうなるんです?』
「私はレギュラーよ。その証拠にみんな私のことを知っているでしょう?」
『私は貴女を知らない』
「私も貴女を知らない」
この間も思ったことだが、彼女は頭が良い様だ。言うほど馬鹿ではないようだ。
「あのあと頑張って聞き出したのよ?妖一の妹とか、まじ有り得ない。転生トリッパーなんでしょ?」
出ました。転生にトリップ。紛れもなく、コイツは違う世界の人間。
それだけ知れれば対処法は浮かぶ。
『何故そう思うんですか?』
「妖一に妹なんていない」
そう、か。
違う世界では、私の存在はないのか。
そう思うと、胸が、痛くなった。
「それにしたって、どうして……」
急に顎に手を当ててブツブツ呟きだした椿屋栞子。どうして、と呟くからには彼女の中にも疑問点が浮かんでいるのだろう。
「誰狙いなわけ?」
『は?』
「わざわざ転生トリップしたからには、狙ってる相手がいるんでしょう?」
今の会話に重要な情報があったことに気がついただろうか。
今彼女は「わざわざ」といった。つまり彼女は転生トリップではない。転生トリップではない方法で皆に記憶を植え付けているわけだ。
『私は転生トリップなんてしていません。元から“この”世界の住人です』
「そんな冗談いらないわよ」
『私はこういった類の冗談は嫌いなんです』
「証拠はあるの?!」
『証拠、ですか』
私は彼女が指す“作品”を知らない。経験から言うとアメフトを題材とした作品なんだろうけれど。
ならば、これならどうだろうか。
『私の通っている学校が証拠です』
「学校?」
『私が転生トリッパーだとしたら、狙ってる人物の学校に行くはずです』
「どこの学校に通ってるのよ」
『氷帝学園です。ご存知ですか?』
「ひょうてい?ど、こ?」
生憎氷帝学園にはアメフト部がない。きっと“作品”には出てきていないだろう。
『つまりは、そういうことです』
「百歩譲って、貴女が転生トリッパーでないとするわ」
上から目線すぎる。百歩譲らなくたって転生トリップをしていないのに。
「それでも、貴女は」
「イレギュラーなのよ」
やけに、冷たい瞳だった。
本当にイラナイものを見るかのような瞳。
「私は違うわ!皆に必要とされてる。この間も見たでしょ?みんな私のことが大好きなの。妖一は一日中と言っても過言じゃないくらいに私にべったりだし、それを見るみんなの目なんて嫉妬の炎でメラメラなのよ?」
『それだって、所詮はまやかしでしょう』
「嘘だって本当になる時があるわ」
『!』
「わかるかしら?私は言わば女神なの」
『め、がみ』
彼女はたからかに笑い、そして私を見下していた。
女神だと、女は言った