翌日。
太陽はこれでもかと私を刺す。痛いくらいの紫外線に私は目を細めるしかない。日焼け止めは塗ったけれど、これじゃあ気休め程度にしかならないだろう。
私は宣言通りとでも言おうか、泥門高校を訪れていた。グラウンドに近づけば活気あふれる声が聞こえてくる。ガシャンガシャンとスレッドマシーンの音も聞こえてくる。
校舎を曲がれば見えてくる土のグラウンド。そこには赤いユニフォームを身にまとった屈強な男たちが体をぶつけ合っていた。
『……』
練習風景はさほど変わりないように見える。さほど、だが。
『妖兄もセナもいない……』
チームの主要メンバーとも言える面々がグラウンドにはいなかったのだ。いるのは見たことがあるような無いような1年生たちだけ。
『……』
これは予想外だった。どうせ妖兄のことだからマシンガンでもぶっ放ちながら超スパルタ練習をしているものだとばかり思っていた。
私は周りを見渡しながら見知った顔に話しかけた。
『岸谷くん』
「あれ、妹さんじゃん」
岸谷洋貴。今年入部してきた期待のキッカーだ。一応何度か顔を合わせている。
『セナとかは?』
「あぁ……部室じゃないっすか?」
『練習は?』
「後で来ると思いますよ」
『……何かあったの?』
「聞く?」
岸谷は困った顔をしながら私をベンチまで連れて行った。ベンチに座れば置いてあったボトルをひとつ手渡される。
「熱中症なると悪いから一応」
『ありがと』
私は一口それを口に含んだ。
『!?』
「気づいた?」
ドリンクが美味しくなかった。薄いとも濃いとも言えず、ただただ美味しくない。
『これ作ったの姉崎さんじゃないよね?』
「俺たちで作ったの」
『は?』
「作ってもらえないんだし、俺たちで作るしかないじゃん?」
『姉崎さんがいて、なんで……』
「いや、姉崎さんは最近顔出してないんだ」
『なんで?』
「進学の準備とかで塾に通い始めたんだと。あの最京大に行くからって」
最京大。ここ周辺ではかなり偏差値の高い大学であり、アメフトでも強豪と言われている有名大学だ。姉崎さんは頭はいいが、それでも余裕があるかと言われればそれは違うのだろう。塾に通うのも致し方ない。
それにしたって、これは。
『そんなこと、妖兄なにも……』
「んー……部室に行けば答えが見えるぜ」
『やっぱりか』
百聞は一見に如かず。日本語というのは便利だ。
「俺も、実際何が起きてんのか頭働かねぇけど、多分お前ならわかると思う」
『なにそれ』
私が呆れ半分でそう言えば、岸谷はスポーツマンらしい笑顔で笑った。
ボトルを置き、私は立ち上がる。向かう先は泥門アメフト部の部室だ。階段を昇ってグラウンドをあとにし、校舎裏へと向かう。
そこにそびえ立つ、部室。
私は金属製のドアノブをひっつかみ、それを素早く横にスライドさせた。
「それでねぇ?ん?」
中から聞こえた、一つの黄色い声に鳥肌が立ったのは気のせいでないはずだ。
脳漿警報