「どうして、こんなことに……」


血相を変えた仁王くんに連れられてやってきたのは、数ヶ月前にお見舞いのために頻繁に通いつめていた病院だった。


「こっちじゃ!」


エレベーターを使うでもなく階段を駆け上がりたどり着いた場所。集中治療室と書かれた病室には見慣れた人物が横たわっていた。


「幸村くん!!」
「幸村、なしてじゃ……!なして、なして幸村が!」


誰よりも生きるということに敏感になっていた幸村くん。そして心身ともに廃れかけていた私たちを叱咤激励してくれた誇るべき部長。

あの仁王くんでさえ顔を真っ青にして、ガラス越しに泣き叫んでいる。


「容態は……」


先に部屋にいた柳くんと真田くんに声をかけてみる。真田くんは目線をしたによこすだけ。柳くんは一度俯き、決意したように私を見つめてきた。


「今は、安定しているといってもいい」
「今は、とは……」
「……俺も医療には精通していない、詳しくは説明しかねるが……現代医療での治療は不可能らしい」
「な……?!」
「参謀、何を言うとるんじゃ……幸村はあの難病も治したんじゃ!今更事故如きで死ぬような奴じゃないぜよ!」
「たわけ!!」


病室に響き渡る真田くんの喝に、一瞬にして病室が静まり返る。しかし、誰しもが気づいていた。その喝の声が、ひどく、震えていたことに。


「現実を、みろ、仁王……」
「さ、なだ……」


顔を歪めた仁王くんはその場に崩れ落ちた。










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