蜜香の目は不自然に揺れ動いていた。逃げ出したいのだろうが、足が震えている。それも仕方ないことだろう。白蘭や骸がいるのだから。


「彼女は、この世界の人間じゃないんだ」
「そ、れは……」
「パラレルワールドとかでもない、この世界の住人じゃないんだ。どんな力を使ったのかは知らないけど、違う世界からこの世界にやってきた言わば……異端者」
「違う!蜜香は異端者なんかじゃない!」


視線に耐え兼ねた蜜香は大声で叫んだ。


「蜜香は、蜜香は精市の妹だもん、双子の、そうでしょう?」
「残念ながら、俺には妹はいるけど、双子の妹はいないよ」
「ッ」


精市の冷たい目に射抜かれた蜜香は膝から崩れ落ちた。


「ともかく、俺は今みんなに謝りたいんだ……ごめん、本当に、ごめん……っ」


そう言って頭を下げた精市は涙ながらに謝った。ごめん、ごめん、と。逃げてごめんと。


「頭をあげろ、幸村」
「さなだ……?」


精市が頭を上げると、精市の顔には真田の平手が飛んだ。バチンっという大きな音が病室に響いた。


「逃げるなど言語道断だぞ!幸村ァ!」
「ッ!ああ、そうだ」
「しかし、俺たちにも非はある」
「っ?」
「そのお前の苦しみに俺たちは気づいてやれんかった。そうだろう……?……仲間なのにな」
「そんな、そんなことはない!俺が、俺が弱かったから、みんなに、」
「そんなことはないですよ、幸村くん」
「そうじゃ、幸村」
「俺たちはずっと幸村に助けられてきたんだぜ」
「頼りっぱなしでごめんな、幸村くん」


そこにいるみんなは、本当に信頼し合った昔からの仲間そのもので。私が見たかったものそのもので、嬉しくなった。


「こんな俺を、許して、くれるのかい?」
「勿論だ」


全員が頷き、精市はまたその綺麗な瞳から涙を落とした。









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