その場にいた誰もが言葉を失った。目の前の白い男は臆することなく笑ってみせた。
医者なのだろうか。いや、失礼だがそうは見えない。
「精市と、知り合い、なんですか?」
蜜香が震えた声で問いかけた。白い男はニコニコと微笑みながら手に持っていた袋から白いものを取り出し口に含んだ。マシュマロのようだ。
「精チャンとも知り合い。市花チャンとも知り合い」 「ッ」 「どんな気分だった?ねえ、幸村蜜香チャン?」
会話についていけない。しかしどうしてだろう、胸が締め付けられるような感覚なのは。
「まぁ話は後々ね。とりあえずはさっさと手術始めちゃおうよ。早いに越したことはないからね」
中身が空になったのだろう。持っていた袋をゴミ箱へと放り投げると携帯を取り出した。
「もしもし?僕だけど?ん?そんなに驚くことないじゃない。綱吉クンと僕の仲じゃないか。それでね?頼みがあるんだけど……そうそう頼み。僕からの頼みじゃ聞けない?ならもうひとりからの声も聞かせたほうがいいかな?僕より彼の方が必死だから」
どこかに電話を始めた彼は一通り会話するともうひとりの男に携帯を投げた。
「ボンゴレ、僕です。えぇ六道骸です。癪なのですが背に腹は変えられませんからね。えぇ、頼みがあるのです。ボンゴレ所有の病院の施設をお借りしたい。どうしても、治してやりたい人がいるのです。現代医療ではどうしようもできないらしく、白蘭の力を借りざるを得ない状況。ボンゴレの病院でなければならないのです」
ピ、と電話を切ると一息ついた、六道骸と名乗る男。
「今から専用の救急車を寄越してくれるそうですよ」 「それはよかった」
携帯を返した六道骸は躊躇うことなく集中治療室内へと足を踏み入れた。
「な!」 「お前、なにして……!」
流石に今の行動には皆が驚き騒ぎ立てた。
「まぁまぁ、許してやってよ。こうして直に会うのは初めてなんだから、あの二人」 「は、はぁ?」 「知り合いじゃねえのかよ」 「知り合いさ。いや、知り合いなんて言葉で表したら可哀想だね。恋人?」 「はぁ!?」
わたわたと慌てる丸井や赤也をみながらクスクスと笑う白い男。怪しい男ではあるがこちらも背に腹は変えられない。幸村が助かるのであれば、今はこの男たちを信用するしかない。
「ん、医療班来たみたいだね。六道骸クン、時間だよ」
病室の扉が開くと、看護師や医師が入ってきて幸村を運び出した。俺たちはそれをただ見つめることしかできない。六道骸と呼ばれた男はそれについていったようだった。
「キミたちも来るかい?」 「……いいのか、行っても」 「いいよ。但し、ここにいる人だけ。そしてここにいる人間には全員きてもらう。それでいいなら」
断る理由はない。全員で頷き、男のあとをついていった。
闇夜の海に震えて
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