あれからもう数ヶ月が経って冬が終わりを迎えようとしていた。そして私は、俺は、幸村精市はとある決断をしようとしていた。
『真田、』 「どうした」 『俺、本格的に治療を始めようと思ってね……』 「!」 『このままじゃ動けなくなる日も、近い』 「何を、」 『暫く入院することにしたんだ』 「幸村……」
天気のいいこの日、部活終わりの空は綺麗な橙色が広がっていて。こんな景色をキャンパスに描きたいなって思った。
『必ず、帰ってくる』 「あぁ、もちろんだ」 『その間のテニス部、よろしく頼むよ』 「あぁ。常勝立海はずっとお前を頂点で待っている」 『頼もしいな、真田は』
私は、私のやりたいことをやる。そう、決めたんだ。白蘭に会って真実を聞いたあの日から。
それにしたってこの病は私の邪魔でしかなかった。だからこそこのタイミングで病と向き合う必要があった。
本音を言えば不安で仕方がない。病気なんて初めてだから。一度は死を体験した身だけれどそれは突然の出来事だったから。今は違う。死というものが一定の距離にずっとつきまとってきている。いつ遠ざかるのかいつ近づいてくるのかわからない。それがたまらなく怖かった。
でもきっと、きっと私の幸せを掴むんだって、だから私は立ち向かうことにした。
テニス部は大丈夫だと思う。真田も柳も私なんかよりずっとずっとしっかりしているもの。仁王も柳生もジャッカルもブン太も赤也だって強い。私が心配することなんて何一つない。
『じゃあ、真田』 「あぁ。しっかりやれ、幸村」 『あぁ』
私は家へと帰りそして明日からの病院生活の準備を整え始めることにした。
明日からは病院なんだからって母さんが腕によりをかけて作ってくれたご馳走がとても美味しくて、まだまだ小さい妹が折り紙で作った鶴をくれてそれもすごく嬉しかった。
例えそれが幸村精市に対してでも。
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