レンリツ方程式 | ナノ





時刻は19時15分。遅刻者が1名。


「チッ」


多少騒がしかった食堂内も跡部景吾の舌打ちで一瞬静かになる。


「折角の料理が覚めちまうからな、食い始めるぞ」
「それもそうだね」
「せやなぁ……」


跡部さんの一声に同意する同じ部長たち。しかしそこに反論する声。


「そこは待つべきやで、跡部」
「そうだぜ!」
「仲間はずれはよくねーな、よくねーよ!」
「もう15分も過ぎてんだよ!」


跡部さんの怒号が飛ぶ。


「それに今日の夕食、蛭魔が一人で作ったんだろ?」
『え、えぇ、まあ……』
「萩之介は例外、真昼も料理ができねえと事前に言われた。宝華はどうした」


そんな時だった。


「ごめんなさぁい!シャワーに時間がかかってぇ」


はぁはぁと息を切らせてやってきたのは言わずもがな、彼女だ。シャワーを浴び髪を乾かしそしてメイクをし直したらしい。コイツ……


「さっさと座れ」
「ご、ごめんねぇ?」


跡部さんの冷たい視線に涙目になりながら謝る宝華梨々。誰よりイラついているのは跡部さんではない。ほかならない私だということを忘れてはいけない。


「いただきます」
「「「「いただきます」」」」


とりあえず跡部さんの号令もあり食事が開始される。ちなみに私は右に妖兄、左に弦一郎前には仁王さんで右斜め前が柳さんで左斜め前が柳生さんと言った立海の多い席についていた。

そして食べ始めたはいいが跡部さんの怒号は止まらなかった。


「宝華、朝の遅刻といい学習しろ」
「ごめんなさいっ」
「ほら跡部、梨々もこない謝ってるんやから許したってもええやろ」
「1回目でも許しがたいってのに2回目も許せだと?しかも宝華、夕食の準備はどうした?」
「えっ?」


一瞬ポカンとする宝華梨々。しかし理解した瞬間に顔を青ざめさせる。


「それがねぇ?未久ちゃんが、さっきはごめんなさい。大変だろうから今日は私が夕飯作ります。だからコートの方はよろしくお願いしますってぇ……」
「本当か?」
「跡部さん!梨々が嘘つくわけねぇだろ!」
「そうですよ!」
「せやで跡部!」


なんて愚かで滑稽な姿だ。恥辱でしかないこんな姿。私ならこんな姿を晒した時点で自殺だな。


「跡部」
「なんだ、幸村」
「せっかくの食事の場なんだから楽しく行こうよ。美味しい肉じゃがが台無しになってしまうだろう」
「……それも、そうか。これからは気をつけろよ宝華」
「うんっ!」


反省の色など無いに等しい。どうせ勘違いしてるんだろうな。まったくおめでたい頭だ。


「法螺なんじゃろ?」


前に座っている仁王さんがもぐもぐと咀嚼しながら私に問うてきた。


『当たり前じゃないですか。それ以前に殴ってない』
「ククク、じゃろうな」
「まず未久が相手を殴ったとしてあの程度で済むはずがねぇ」
「同意するぞ、妖一」
『なにそれ、貶してんの?』
「運動能力及び身体能力の面ならば兄より上だろう?」
『否定はしない』


確かに私は兄よりも身体能力が上だ。小学校時代アメフトに出会うまで何にも興味を持つことがなかった妖兄と違い私は様々なものに手を出した。パソコンに将棋にチェス、それから華道や書道もやったしダンスにバスケに空手に剣道もやっていた。

今でも続いているといっていいのはパソコンくらいだが。

それでも書道や剣道なんかは弦一郎と肩を並べられるレベルだ。

だからはっきり言ってしまえば私は兄よりも総合力では上だ。


でも、


『私は妖兄のこと尊敬してるもの』


私と妖兄は似ているようで全く違う。私の持っていないものを妖兄は持っている。だから私は妖兄を下に見ることはしない。それと同じように妖兄も私のことを下に見ようとはしない。


「本当に、お前たち兄妹は不思議だな」
『時代錯誤してる人に』
「不思議たぁ」
「『言われたくない(ねぇ)』」




ワタシとキミと大体アナタ



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