レンリツ方程式 | ナノ





『一応、初めましてになるのかな。改めて蛭魔未久です』


私がそう名乗れば感心したように息を吐く財前さん。


「本名やったんやね、それ」
『バレないもんでしょ?』
「せやね。俺も改めて、財前光ッスわ。よろしゅう」
『それって苗字の文字ったやつ?それとも善哉が好きだったの?』
「半々ってとこっすわ。たまたま善哉が好きでたまたま財前やっただけっすわ」


そういって笑う財前さん。やはり予想通り、彼はネットで知り合った善哉さんだったらしい。


「にしても、タメやったんスね」
『そうだね。2つくらい上かと思ってた』
「俺もッスわ。あ、未久って呼んでもえぇっすか?」
『勿論。こっちも、光って呼んでも?』
「勿論!」
「楽しそうばいね、財前」


さっそくベッドに寝転がっているちーちゃんが光を睨みながら言う。


「えぇやないですか、別に」
「どんな関係ばい?」
『ネットで知り合った、かな?』
「ほんなこつ、未久ば怖かね。いろいろ手ぇ出し過ぎばい」
『それが私だよ。今更』
「ばってん……」


納得いかないとでも言うように眉をひそめるちーちゃん。

そんな空気などなかったかのように光が口を開く。


「で、アイツがブログで言うとった奴っすか」
『そうそう』
「ブログで言うとったち、なんのこつばい?」
『メールしたでしょ』
「あぁ」


そうここの二人は宝華梨々という人物がいかに異質かを知ってる二人なのだ。光はブログを通じて、ちーちゃんは私のメールを通じて。


「明らかに謙也さんはダメっすわ」
『だったね』
「ユウジもおかしかったばい」


ユウジとは一氏ユウジのことだろう。確かに彼もおかしくなった部類だろう。


「で、未久は何する気ばい?」
『この合宿であいつの化けの皮を剥ぐ』
「へぇ」
『それで私もいろいろ動くんだけど、もしなにかあっても私の味方をしないで欲しいんだ。よろしく』
「「は?」」


いきなりの私の発言に二人が見事シンクロ。


「どういうことばい?」
「詳しく説明してくれるんやろな?」
『順を追って説明する。質問はまとめて最後に聞くから終わるまで黙っててね』


とりあえず私は夢小説というものの存在。彼女がトリップしてきた人物の可能性。これから起こるであろうことの話をした。二人は最初に言った通り黙って私の話を聞いてくれていた。時折思案顔になったりはしたが。


『それでさっさと氷帝から追い出したいわけ。そして今後のことを考えてほかの学校にも影響が及ばないようにこうして合同合宿を開いたってこと。ここまではいい?』
「おん」
「よかよ」
『私はまぁ今まで優等生を演じ、多少口答えはするもののそれを告げ口したりすることはなかった。宝華梨々からすれば使い勝手のいい駒かなにかだと思う。だから今回の合宿でそれを覆す』
「……反抗するちこつばい?」
『そう。その際何をしでかすかわからない。私を陥れて他の男を使って私をいじめてくるかもしれない』 
「「!」」
『だから、そんなことがあったとしても私の味方をしないで欲しい』
「な、なんで!」


ちーちゃんが声を荒げる。光も声は出さないものの不服そうな顔だ。


『いや、テニスしようよ』
「「は」」
『いくら私が宝華梨々を追い出すために開催した合宿とは言え、テニスしに来たんでしょ?じゃあテニスしてよ』
「それとこれとは話は別ばい!」
「何を言うとんのや、」
『だって考えても見てよ。もし私が本当に宝華梨々をいじめたとするよ』
「おん」
『それは私が悪いのは目に見えてるけど、だからって第三者がそこに暴力で介入していいの?』
「「!」」
『それは“制裁”でも“正義”でもない。“偽善”の押しつけでありそれもまた“暴力”で尚且つ“悪事”であることには変わりはない』


黙り込む二人。私はなおも続ける。


『それに、暴力沙汰になんかなったら大会出れないよ?』
「あ、」
『それもわきまえずに私に暴力を振るってくるようだったら、そこまでの選手だったってことでしょ?』
「なんも、言えんばい」
『私の心配はいらないから、テニスの練習に集中して欲しい。つまりそういうことだよ』


私は話を終えてコーヒーを飲んだ。流石は跡部財閥所有の別荘。備え付けのコーヒーも普通に美味しい。


「ばってん、何かあったらちゃんと言うとよ?」
『はいはい』
「……ほんまに、一人で大丈夫なんか?」
『あ、言ってなかったね』
「「?」」
『立海のマネとして来てる男、私の兄だから』
「は?」
『妖一が来とると?』
「変装して別人になりすましてるよ」


私がそういえばちーちゃんはおかしいとでも言うように笑った。


「ほんなこつ、シスコンばいね」
『ちーちゃんには言われたくないと思うよ?妖兄も』
「兄貴がおるんやったら、まあ安心っすね」
『うん』
「でも、ほんまに何かあったら言えや」
『ありがと、光』




密室秘密会議にて



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