レンリツ方程式 | ナノ





年齢不相応な顔をした黒いキャップ帽を被っている青年は私の睨みに耐え兼ねて顔を背けた。


「真田と知り合いなのか?」
『親の職業柄とでもいうかね』


ほとんど誰も知らないことだが私の父であり同時に蛭魔妖一の父である蛭魔幽也は将棋の棋士だった。日本のアマチュアで負けなし。とにかく攻めるプレイスタイルだった。

まあそんな父の職業柄将棋を嗜む人とはそれなりに関わってきており、真田家もその一つだった。


「1週間ほど前に突然連絡が入ってな。合同合宿にマネージャーとして連れて行けと言われてな……」
「たまたまそこに俺も居合わせてね。面白そうだなって思って了承したんだ」


爽やかな笑顔を浮かべるのは立海の部長。しかし爽やかな笑顔の裏に黒いものを感じるのは気のせいではないはずだ。


「自己紹介が遅れたね。立海大付属の部長、幸村精市だ。短い間だけどよろしくね」
『蛭魔未久です。よろしくお願いします』
「説明はしてある。あとどうなろうと俺は知らねえよ」


妖兄はぶっきらぼうにそう言う。どうやら妖兄のほうから例のマネージャーのことは全員に伝わっているらしい。といっても堕ちる堕ちないは自分自身次第だ。それに未知の力が関わってるとなればそれはどうしようもないとしか言えない。


『詳しい自己紹介はあとでします。多分もうすぐアイツが来るので』


私がそう言い立海のみんなが頷いた瞬間だった。


「青学のみんなを案内してきたよぉ!あ!立海の皆さんですかぁ!はじめましてぇ宝華梨々っていいますぅ!梨々って呼んでくださいねぇ!」


甘ったるい声と匂い。心なしか目の前にいる幸村さんのこめかみがヒクヒクしている気がする。


『えと、立ち話もなんなのでお部屋の方にご案内いたします。跡部さん、確か四天宝寺の到着予定時刻は10時でしたよね?』
「あぁ」
「未久ちゃん、梨々が案内するよぉ?」
『いえ、先ほどお任せしてしまったので今度は私がしますね』
「そ、そう?じゃあよろしくね?」
『はい。こちらです』


私は立海の先頭に立ち宿舎の中へと歩を進めた。

暫く歩いたところで幸村さんが声を上げた。


「誰か堕ちた奴はいるかい?もしいたら俺が直々に殴ってあげるんだけど」


その声に誰も反応しない。先ほど表情をみたところ問題はなさそうだったが。


「安心しろ精市。我が立海があんな女に現を抜かす確率は0%だ」
「そうかい?ならいいけど」
「あんな女のどこがえぇんじゃ?確かに可愛いのかもしれんが臭いナリ」
「それに女性としての振る舞いがなっていませんでした」
「どう考えてもミーハーだったッスよ!」


宝華梨々を否定する言葉が数々上がる。どうやら全員が大丈夫だったようだ。


『この4階のスペースが立海のスペースになります。部屋は大体2〜3人部屋。鍵は部屋の中に置いてあるはずです。あとはお好きなお部屋をお選びください』
「のう、蛭魔の妹」
『未久と名前で呼んでもらっても構いませんよ。まぁその呼び方でもいいですけど』
「俺は仁王雅治じゃ。なぁ、その喋り方気になるんじゃが」
『素で話せと、そうおっしゃるわけですね?』
「おん。そういうことじゃ」


銀髪で長い襟足を適当に縛っている彼、仁王雅治がそう言った。独特な雰囲気独特な喋り方。ほんの少しだけ、兄に似ている気がした。


『私自身のキャラ作りもありますからいつも、というわけにはいきませんよ?』
「俺らの前だけでいいきに」
『わかった。仁王さんでいい?』
「出来ればまーくんって呼んでほしいんじゃけど」
『却下』
「プリ」


今のはなんだろうか。鳴き声か何かか?泥門の瀧夏彦でいうアハーハーみたいなそういうアレなのだろうか。謎だ。


「フフフっ、あの仁王がこんなにも早く懐くなんてね」
「あぁ。いいデータが取れた」


いや、このチーム自体が独特だった。


「じゃあ改めて自己紹介をしようか。俺は幸村精市。どうせなら精市って呼んでくれてもいいよ」
『考えておきます』
「俺は柳蓮二だ。是非ともデータをとりたいのだがいつなら時間が空いている」
『生憎埋まってます』
「仁王雅治じゃき。まさくんでもえぇぜよ?」
『プリッ』
「私は柳生比呂士と申します。よろしくお願いいたします」
『こちらこそ』
「俺は丸井ブン太!シクヨロ!」
『よろしく』
「俺はジャッカル桑原だ。よろしくな?」
『ブラジルの方ですか?』
「あぁ。ブラジルとのハーフだ」
「俺は切原赤也!よろしくなっ!」
『あぁ、遅刻魔か』
「なっ!」


ドッと笑いがおきる。チームの結束力が感じられる。流石は優勝校というべきか。


「俺の自己紹介は必要ないな」
『いらないよ、弦一郎。ただ相変わらずの老け顔だね』
「なっ!」
『で、妖兄。真昼さんとでも呼べばいいの?』
「ケケケ、好きにしろ。俺も蛭魔さんって呼んでやるよ」
『キモっ』
「言っとけ」




独特な雰囲気が包む




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