レンリツ方程式 | ナノ




合宿当日。

氷帝はほかの学校よりも早く到着予定のはず……なのだが。


『来ない』


到着予定時刻は8時。しかし今は8時30分。そして四天宝寺以外の学校は9時には到着する予定だ。主催校が遅刻なんて笑えない冗談だ。

門のところで道路を凝視していればやって来る1台のバス。


『やっと来た』


私はロータリーまでもどる。バスはロータリーまでやってくると停車。扉が開くと跡部さんが降りてくる。


『……30分の遅刻ですけど』
「アイツが遅刻したんだよ」
『……なるほど』


小声で会話しながら今回の遅刻の現況に目をやればいつもよりも気合の入っている彼女が目に入った。そしてバスの下の部分から荷物を取り出していく。大体は大きなカバン1つにまとまっているにもかかわらずピンク色した荷物が3つ見えるのは幻覚だろうか。


「幻覚じゃないんだよ、残念なことにね」


私の心を読んだかのように答えをくれたのは酷く疲れた様子の萩ちゃんだった。


『どうしたの……?すごく疲れてるみたいだけど』
「昨晩部屋割りとかデータの整理とかしててね。だからバスの中で寝ようと思ってたんだけど騒がしくて眠れなかったんだ」


そう言われて今一度目を向ければ明らかにあそこの空気はおかしい。全国区の合宿の雰囲気とは思えない。小学生の遠足と言ったほうがしっくりくるレベルだ。


「テメーら!さっさと荷物運びやがれ!あと30分もしないうちに青学や立海が来るんだぞ!」
「そうカリカリすんなや跡部」


明らかにイライラしている跡部さん。


「部屋割りは出発前に配った通りだよ」
「未久は他の学校の到着に備えておけ」
『わかりました』


跡部さんの言葉に私は頷く。


「重いー」
「どれ、梨々。荷物貸してみぃ?」
「俺も持つぜ」
「宍戸ッ!侑士!抜け駆けすんなっ!俺も持つぜッ!」
「ありがとぉ!」
「気にすんなや。俺らがしたくてしてるんやからなぁ」
「そうだぜ」


また始まったよ茶番。どうでもいいからさっさと準備を終わらせてくれ。

そんな状態で団子になりながら彼らは部屋へと向かった。

ちなみに、宿舎となる建物は5階建てで氷帝は5階。4階が立海で3階が青学。2階が四天宝寺で1階にマネージャー、つまりは女子が寝泊まりすることになっている。基本的には2〜3人部屋だが、女子には1人1部屋与えられている。あ、あと跡部さんも一人部屋とのこと。


「ったく、めんどくせぇぜ」
『あれ、跡部さん。荷解きとか終わったんですか?』
「元々俺様に荷物なんかねぇよ。大体のものはここにあるからな」
『あー……』


フロントのソファーに座って語らっていればやって来る1台のバス。


「もうそんな時間か」
『9時、ですね』
「あれは青学だな」
『行きましょうか』
「あぁ」


ロータリーに止まったバスから次々と降りてくるジャージを身にまとった人たち。


「今日はお招き感謝するぞ、跡部」
「あぁ、よろしく頼む手塚」


彼が手塚国光。中学3年生のときに全国優勝へと導いた青学の部長。


ぞろぞろと降りてくるメンバー。最後に個性的な髪型をした人が降りてくると手塚さんが声を上げた。


「青春学園テニス部だ。5日間、よろしく頼む」
『初めまして。氷帝学園1年マネージャーの蛭魔未久です。まだマネージャーになって日が浅いですが精一杯仕事させていただきます。よろしくお願いします』
「あぁ、よろしく頼む。俺は青学部長の手塚だ」


そう言って差し出された手に私も手を重ねる。


「ごめんなさぁい!遅れちゃいましたっ!」


振り向かなくたってわかる。わざとらしく息を切らしながらやって来たのは宝華梨々だ。


「えっとぉ、青学の部長さんですよね?」
「あぁ、青学部長の手塚だ」
「梨々はマネージャーの宝華梨々ですぅ!気軽に梨々って呼んでね!」


私は青学の面々に視線を這わせる。今確認しただけで堕ちたと思われるのは3人といったところか。


「立海はまだみてぇだな。未久、案内してやれ」
『わかりました。青学の皆さんはこちらになります』
「未久ちゃん梨々が行くよぉ?」
『そうですか。ならお言葉に甘えます』
「じゃあ行こっか!こっちだよぉ!」


そういって青学を引き連れて宿舎内へと入っていった宝華梨々。


「やっぱり何人か堕ちたみてぇだな」
『えぇ。ま、どうでもいいんですけど』
「ほんと、いい性格してるなテメェは」
『褒め言葉として受け取っておきます』
「にしてもまた立海は遅刻か」
『また?』
「どうせ切原だろ」


どうやら立海には遅刻常習犯がいるらしい。青学に遅れること10分。バスが入ってきた。一番に降りてきたのは中性的な印象を与える綺麗な人だった。


「遅れて申し訳ない、跡部」
「どうせ切原だろ」
「もうお見通しみたいだね。苦労をかける」


続々と降りてくるメンバー。そして一人、マネージャーらしき他の選手とは違うジャージを身につけた人物が降りてくる。


『ッ!?』
「あぁ、跡部。紹介するよ。今回臨時マネージャーになった真昼だ」
「真昼です。よろしくお願いします」
「跡部だ。よろしく頼むぜ」
『……なんの冗談?私何も聞いてないんだけど』


立海のマネージャーである真昼なる人物を睨みつける。健全男子高校生のような長くもなく短くもない黒髪。真面目さを醸し出させる銀フレームのメガネ。着崩すことなくきっちりと着こなされたジャージ。

しかし私がイラつきもそのままに言葉を投げかければ、そんな姿とは裏腹な悪魔のような笑みを顔ににじませる。


「よく気がついたなァ?」
『気がつくに決まってるでしょうがバカ兄貴』
「兄貴だぁ?!」


隣で声を上げた跡部さん。よくよく考えたら初対面だったか。


「妹が世話になってるな、跡部景吾。改めて、蛭魔妖一だ」
「妹が心配だったってか?」
「さぁな。ちょうどよく立海に顔見知りがいたからな」
『……弦一郎、』


また古い顔なじみがいたものだ。



脳内ファンファーレ





―――――――――
長くなりました(汗)




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