レンリツ方程式 | ナノ





合同合宿前日。私は一足早く合宿が行われる跡部財閥の別荘に訪れていた。都内から少し離れた自然が多い場所だ。空気が美味しいと思う。

なぜ一足早くここを訪れたか。それは合宿時の準備のためだ。

準備といってもたくさんある。ボールやネットや整備など……まあこれは跡部財閥の力で大体は出来上がっているわけだけれど、一番重要なのは監視カメラの方だ。跡部さんにも既に了承を得ており好きな箇所に好きなだけつければいいとのお達しだ。

私はお言葉に甘え場所という場所にセットした。

マネージャー室や厨房、廊下や階段。死角となりやすい場所から使わなさそうな倉庫まで。流石に大浴場やトイレにはつけていないが、当日宝華梨々が過ごすことになっている部屋には盗聴器だけ仕掛けることにした。

犯罪だって?そんなの今更だよね。

人仕事終えた私は私に与えられた部屋で護身用のスタンガンを磨いた。勿論、妖兄からもらったものだ。


『ん、メール』


机の上に置いておいた3台のうちの1つのケータイが震える。


『今頃返信してきたよ……まったく』


四天宝寺に通っているという知り合いからようやく返信が。


『まぁ、元気そうでなによりかな』


これで四天宝寺は大丈夫そうだ。


『問題はどれだけの人間が「逆ハー補正」にかかるか』


こればかりは予想も計算もデータも意味をなさない領域だ。まあ、氷帝で補正にかからなかった人間を見る限り「冷静に周りを見れる人間」というのは大前提のようだが。


『ブログでも更新するか。明日は合宿!ちょっと私からも仕掛けたいなとか模索中。これだから女って怖いよね。私も女だけど。っと』


ブログを更新し終われば数分と経たずにコメントが届く。


『あれ、善哉さんも明日から合宿なんだ……これって偶然なのか?』


善哉さんからのコメントによると善哉さんの部活も明日から合宿があるそうで。同じ日に合宿なんて偶然があるのかと私も驚いている。


『まさか、ね』


とある可能性もあるが、限りなく低い。捨てきれない数字ではあるものの私はあえて気にしないことにした。


『あ、博士さんからもコメきた。……え?博士さんも明日合宿?なにこれこわい』


常連さんの一人博士さん。彼も明日合宿だという。なにかの心霊現象なのではなかろうか。

あとはほとんど知り合いだったりする。例えば桜庭さんだったり高見さんだったり、陸くんだったり水町くんだったり鈴音ちゃんだったり。


ピョコンとスカイプチャットの音が鳴る。


「今通話大丈夫っスか?」
『大丈夫だよ』


そう打つと数秒で通話音がなる。


『はいーこんばんは』 
「こんばんは。いや、あまりにも驚いたもんで」
『私も今すっごく驚いてて……まさか、なぁ?とか考えてるんですけど』
「俺もっすわ。聞いていいですか?未久さんの学校」
『善哉さんも教えてくれるなら』
「勿論、教えますよ」
『私、氷帝学園の高等部に通ってるんです』
「うっわー……そゆことか……」
『善哉さーん?』
「俺、四天宝寺ッス」
『あー……なるほど』


世間は狭いものだ。ネットで知り合った人物に明日リアルで関わってしまうことになるとは。


「じゃあ……明日、」
『うん、いるよ。てか、テニス部だったんだね』
「何部やと思うとったんですか?」
『んーサッカーとかかな?』
「んーめんどいっすわ」
『テニスも十分めんどくさいでしょ』
「まぁ、否定はせんかな」


気づけばそのまま会話に花が咲いてアナログ時計の短針は11を指そうとしていた。


『あー、明日朝早いよね?』
「まぁ5時集合ですわ。なんでも跡部財閥が飛行機出してくれるとかで」
『あー……そんな話ししてたかもしれない』
「どんだけぶっとんどるんすか。ありえへんわ」
『まぁ、ね』
「んじゃあ名残惜しいっすけどこのへんで」
『そうだね』
「明日、会えるんすか」
『前にも言ったけど過度な期待はしないでね』
「えぇんすよ。俺は未久さんって人に会いたいんやから」
『わー……イケメン』
「お、おやすみ」
『おやすみ』



決戦前夜の戯れ



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