レンリツ方程式 | ナノ





朝。適当に(といっても品数は5つを数えた)朝食を作り、低血圧な兄を叩き起こして共に朝食をとり私は早くに家を出た。

跡部さんには今日の朝練は出ないと既にメールしてある。どんなに早く家を出たって間に合わないのは目に見えていたから。

そんなこんなで氷帝に着いたのは授業開始15分前だった。


「おはよう!蛭魔さん!今日は朝練出てなかったの?」
『おはようございます。今日は家の用事がありまして休ませていただいたんです』
「そうなんだー!大変でしょ?テニス部のマネ」
『大変ですけど、やりがいもありますから。部員の皆さんにも良くしてもらっていますし』
「へー!そうなんだ!」
「最初はびっくりしたよ!蛭魔さんがマネやるって聞いて!」
「そうそう!でもなんかぴったりだよねーって!」
『そ、そうですか?』
「うん!」
『そう言っていただけると嬉しいです』


前から気にしていたその他の女子学生からの評判は悪くないようだ。それどころかクラスの女子からは認めてもらえているようで安心した。いくら私が裏ではえげつないこと考えているような奴でもいじめられるのは勘弁だ。


「で、どうなの?あの転校生」
『あぁ……宝華先輩ですか?』
「そんな名前っだたかもね」
「そうそう、その人。仕事とかしてるの?」
『していないわけではないですが……表の仕事ばかりをしたがるようで』
「やっぱりー!」
「この間もコート見てたんだけど応援ばっかりしてんの!」
「蛭魔さん、何か困ったことあったら言ってね?」
『ありがとうございます』


本当に宝華梨々は馬鹿だと思う。味方にするべきは男子テニス部なんかではなく女子だというのに。

きっとここでの会話は瞬く間に横に広がりそして上にも広まっていくのだろう。


ガラリと教室の戸が開くと朝練を終えた日吉が入ってきた。


『おはよう、若』
「おはよう」
『なんか疲れてない?』
「お前が朝練に来ないからって向日さんや忍足さんがうるさかったんだよ」
『うわー』


そこまで堕ちたのかとしか言い様がない。逆に今まで真面目に出ていたのだから褒めて欲しいものだ。宝華梨々はどうだ?初日だけ来てあとは朝練出てないだろうが。


「別に練習のことや授業のことの愚痴や悪口を言われるならいいんだ」
『若?』
「お前のことを、なんにもわかってないのに悪く言うのがムカつく……」


そう言ってギリリと奥歯を鳴らした若。

私は純粋に驚いた。日吉若という男はこんな男だったかと。そして純粋に嬉しかった。彼はちゃんと私を見てくれているのだと思って。


『若がわかってくれてるならそれでいいよ。別にあの人たちに私のことを分かってもらおうだなんて微塵も思ってないし』
「フッ……お前らしいな」
『でしょう?』


私と若の笑い声は授業開始のチャイムにかき消された。




理解されるということ




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