レンリツ方程式 | ナノ





今日で私がテニス部のマネージャーになってから一週間となった。事態は日を増すごとに悪化していっている気がする。いや、とある方向では回復しているのだけれど。

この一週間でわかったことは宝華梨々がテニス部のレギュラーにしか興味がないということだ。マネージャーの仕事もレギュラー関係のことしかしない。まるで他の部員なんてなかったかのような扱いだ。そのおかげかどうかは定かではないが準レギュラーや一般部員から宝華梨々への好意は日を追うごとに小さくなっている気がする。まあそれと比例するかのようにレギュラーの溺愛具合はひどくなっているのだが。

まあ一番悪化しているのは跡部景吾の眉間の皺だろうか。


私は表の顔全面押しでマネージャーの仕事を真面目にこなしている。先ほど宝華梨々はレギュラー関係の仕事はするといったがこれを前言撤回しよう。

彼女は私が洗ったタオルを持っていき、私が作ったドリンクを持っていき、あたかも自分が部室を掃除したかのように振舞う。その間に彼女は黄色い声援を送っているだけ。


『そろそろ、動くべきかな』


これ以上は同じことの繰り返しだ。あの中で練習せざるを得なくなっている跡部景吾や樺地宗弘、それに萩ちゃんや若がかわいそうだ。


『よし』


私は朝練へ参加するために朝早く家を出た。




早く着いたと思ったのだけれどもうコートには若の姿があった。


『早いね、若』
「未久か、お前も早いな」
『マネージャーでしょう?』
「その言葉、あの女にも言ってやれ」
『もう限界近い?』
「早く何とかしてくれ……」


本当にきついようで普段からそんなに良くない目つきがさらに酷くなっている。


『まあ、今日辺りから私も動くよ』
「!」
『安心した?』
「……大丈夫なのかよ」
『あれ?不安なの?』
「心配してやってんだよ、気づけ」


フイ、と顔を逸らしてしまう若。


『ありがと、若。心配してくれて。でも安心してよ。私を誰だと思ってるの?』
「……心配して損したな」


フッと笑みをこぼす若を見て私も思わず笑みをこぼした。


「随分仲良さげじゃねえか、アーン?」
『跡部先輩、おはようございます』
「おはようございます、跡部さん」
「ああ、おはよう」


気づけばもう着替えを済ませた跡部景吾が背後に立っていた。


『同じクラスなので、席も隣ですし』
「ほう」
『確か宝華梨々は忍足さんのクラスでしたね』
「あぁ。で、どうだ?情報の方は?」
『不可解なことが多すぎてまだなにも。ただ、ちょっとこちらからも動こうかなと』
「それは危険じゃねえのか?」
『何とも言えないですね。それで今日一日録音機材を身につけたいと思っているのですが許可はいただけますか?』
「録音機材?」
『思考回路の低下した人間は思わずポロリと何かを言ってしまうものですから』
「なるほどな。許可してやる」
『ありがとうございます』


これで準備は整った。あとは私の技量次第といったところか。




下準備の重要性




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