「ドリンク作ってきたよぉ!」
遠くからそんな声が聞こえてきた。あーそういうことか。私が作ったのにあたかも自分が作ったかのようにみせかけるのか。
「梨々!重かっただろ?」
「重かったけど大丈夫だよぉ?」
可愛くてか弱い女の子を演じるのも楽じゃなうだろうにご苦労様です。
「アイツはなにしてんだよ?」
「え?未久ちゃん?」
「梨々ばっかりにこんな重労働させてよっ!」
「その通りですね!」
「激ダサだぜっ」
視野狭すぎやしないか?私はこうして8kgのジャグを二つもってるってのに。まあいいんだけど、私が逆におかしいんだろうし。
「お前らの目は節穴か。あっち見ろ」
「「「え?」」」
跡部に声をかけられてようやく私の方を見やる。
『ドリンク持ってきました。全部はさすがに持ってこれなかったのでもう少し待っててください』
レギュラー以外の部員は私の持ってきたものに目を見開き一番近くにいた部員は慌てて私に駆け寄ってきた。
「お、重かったろ?」
『軽くはなかったですけど、何往復もはしたくなかったので』
「俺も手伝うよ」
『いえ、練習していてください。これはマネージャーの仕事ですから』
「手伝わせてくれ」
『……そこまで言うのなら。先輩の好意を無碍にもしたくありませんので。えと、』
「坂下だ」
『では、お願いします。坂下先輩』
坂下先輩と一緒に部室に戻る間にレギュラーの方へと視線を投げてみれば案の定顔をしかめた宝華梨々の姿があった。そんな顔には誰も気がついていないようだけれど。
私はジャグをひとつと残りのタオルとコップを。坂下先輩はジャグふたつを手にコートへと戻った。
『坂下先輩、ありがとうございました』
「いいや気にしないでくれ。むしろこんな重いものすまない」
『これが仕事です』
「仕事なのもわかるけど、頼れるところは頼ってくれ。同じ部活に所属する仲間だろ?」
『!』
坂下先輩、いいひとだ。こんな人まで彼女の虜になっているのか?今はレギュラーに向かって黄色い声を投げている彼女の?
やはり、おかしい。
『使い終わったタオルはこっちにおいてください。コップは足りそうですか?』
「あぁ大丈夫そうだ」
『じゃあ私倉庫整理してきます。さっきみたとき少々乱雑だったので』
「わかった」
レギュラーの方に視線を投げた時に若からのヘルプが出ていたきがするが敢えて無視することにした。
桃色劇場とリアリスト