レンリツ方程式 | ナノ





キャハハ!と笑う宝華梨々。もう、彼女の周りに人はいない。


「でもぉアンタだってぇ?梨々と一緒じゃない」


そういって私を見やる宝華梨々。

あぁ、まだ彼女は勘違いをしているのか。


『私も貴女と同じ“トリッパー”だと言いたいんですか?』
「やっぱり、わかってるんじゃない!」
『そりゃ、調べましたから。貴女の口から“逆ハー補正”やら“傍観主”なんて訳の分からに単語が出てきたモンだから必死にね。きっとこの単語に貴女の秘密がある、そう思ったから』
「はぁ?」
『私は残念ながら“トリッパー”ではありませんよ。所謂“転生”もしていません。生まれてこのかたずっと蛭魔未久です』
「そ、そんなわけないじゃない!アンタだってどうせ神にたのんでこの“テニプリ”の世界に来たんでしょ!」
『“テニプリ”ですか……それがこの世界をモチーフにしたアニメか漫画といったところですかね』
「アンタ、ほんとに……そ、そんなわけないわ!どうせこいつにも逆ハー補正がついてるのよ!だから景吾やジローちゃんが私に惚れなかったのよ!」
『宝華梨々、お前は本当に脳みそが足りないヤツだな。この調子だと氷帝への編入試験もその神とやらの力といったところだな』
「編入、試験」
『編入試験やってないのか。なるほど。そこまで神が設定をしてこいつを送り込んだといったところなのか……はぁ、めんどくさい事するね、神っていうのも』


編入試験で高得点を叩き出したという宝華梨々。しかしこれもまた「神」という存在が作り上げた架空の設定のようだ。こんな会話から馬鹿丸出しの人間が氷帝学園に編入できるはずがないか。


『で?どうすんの?貴女にもう居場所はない。貴女の居場所をなくすための合同合宿だったんだからね』
「どういう、」
『男子テニス部の全国ベスト4を集めて合同合宿を開く。そしてその4校の前で宝華梨々、貴女の正体を晒す。そうすれば貴女は氷帝を追い出されたあとにほかの学校へと逃げることができなくなる』
「なっ!」
『私の予想では、貴女の言う“テニプリ”でも有名な学校なんじゃないの?この4校』
「当たり前でしょ!」
『当たり前……そう、』


私がため息を吐けば何故か高笑いをはじめる宝華梨々。


「アンタがトリッパーじゃないというならそれでもいいわ。そんなこともうどうでもいい!」
『?』
「梨々には神がついてるのよ?アンタなんかね、どうにでもなっちゃうのよ!」
『そうですね、是非会ってみたいですよ。その“神”に』
「後で後悔しても知らないわよ?出てきてよ、神!」


宝華梨々がそう言えば、どこからか声が聞こえてくる。


「なに?」


現れたのは黒い衣に身を包んだ男。その男は宙に浮いており、雰囲気も何もかも異質だった。宝華梨々の異質ともまた違う。明らかに人間ではない。


「この女を消してよ!そして逆ハー補正をもっと完璧にかけて!」


宝華梨々は金切り声をあげる。神、と呼ばれている男はめんどくさそうに宝華梨々を見つめ、そして私の方に視線を投げた。


「初めまして、蛭魔未久。お前のことは見ていたよ」
『貴方は、神?』
「元々神なんでものは存在しない。人が勝手に想像力を膨らませ神と名づけたに過ぎない」
『確かに』
「だが、人間で言うところの神ではあるんだろうな」


んー、と何かを考えながらふよふよと浮かんでいる神。


「ちょっと!早くしてよ!」
「何を」
「コイツを消すの!なにのんきに挨拶なんかしてるのよ!」
「なんで俺が蛭魔未久のことを消さなきゃいけねえんだよ」
「はぁ?梨々が頼んでるのよ?」
「……はぁ、コイツと会話してると頭痛ぇ」
『神も苦労してるんだね』
「フッ、やっぱりお前は優しい奴だな」
『え……?』


神はフッと笑うと地へと降りてきて私の目の前に立った。


「言っただろ?見ていたって」
『どういう、意味?』
「一から説明してやるよ。ちゃんと聞いとけよ。テメーもだ、宝華梨々」


神はそう言うと皆に聞こえる声で説明を始めた。


「まず第一に、宝華梨々は選ばれた人間じゃねえよ」
「はぁ?!」
「そしてそれと関連して一つ。俺は神といっても所謂“死神”だ」
「『!』」
「つっても、魂を狩るなんてことはしねぇよ。それこそ人間が考えたお伽話だ」
『死神は、なにをするの?』
「魂を狩りはしねぇが、管理はする」
『魂の、管理?』
「世界ってのは人口が減ったり増えたりしているように思えるが、魂の数はある一定の値じゃなきゃいけねえんだ。それを管理すんのが仕事」
『へぇ、』
「世界には創造神っつってな、その世界を作り出した神がいるんだ。死ぬも生きるもその神次第なんだよ、大概な」
『寿命とか、病気とか?』
「そうだ。だがたまに、そんな神の意志に反する行いがある。何かわかるか?」
『殺しや戦争?』
「御名答。戦争はまだいい。問題は私念の殺しだ。神にも人のようにそして俺のように感情がある。自分の作り出した世界にそんな奴はいて欲しくねえってのが宝華梨々がいた世界の神の考え」
『なるほど、』
「宝華梨々は自分の欲望のため、3人殺した。だから俺が魂を世界から引き剥がした」
『それで、どうしてトリップになったの?』
「普通魂ってのは世界から引き剥がされるとその力に耐え切れず消滅する。だが、こいつの欲望で塗れた魂は消滅しなかった。そして図々しくも俺にトリップさせろと願ったんだよ」
「梨々は選ばれたんじゃないの?だってそのために生贄も、」
「あれは生贄じゃねぇよ。ただの犠牲だ」
「じゃあなんで願いは3つ叶えるだなんて言ったの!」
「消滅しない魂は世界に戻すしかねえ。といっても元の世界には戻せねえ。だからほかの世界に送るしか方法がなかった。といっても何もなしで世界に放り込むわけにも行かねえ。だから3つまで願いを叶えてやるって言った。ただそれだけだ」
『でも、その願いですらも欲望に塗れていた』
「あぁ。生きるために必要なものだったらいくらだって真面目に用意した。だが“逆ハー補正”だの“容姿”だのとふざけたことばかり言うから適当にしたんだよ。つっても見殺しにするわけにも行かねえから金は多額にしてやったがな」
『人間みたいね、死神も』
「そうか?」
『すごく。私みたいな考え方』
「あぁ。だからお前のことを気に入っていた」
『え?』


神は私の頭を撫でた。




神様ファンタジア



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長くなりそうなのでここで切ります。なんかものすごくファンタジー臭。こんな予定なかったのに……。


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