レンリツ方程式 | ナノ





「なっ……」


立海の臨時マネージャー真昼が実は金髪の男でした。という事実についていけていな人物が大半なようで。そしてきっと、妖兄の顔と名前を知っている人は多いだろう。

クリスマスに行われる一大イベントの主役だったのだから。そしてそれ以上の意味で蛭魔妖一は有名だ。


「ま、まさか、コイツ、」
「蛭魔、妖一っ?!」
「あの、泥門の悪魔っ?!」
「な、なんでそんな奴が、」


動揺を隠せていないメンバーに紛れてクエスチョンマークを浮かべるのは宝華梨々だ。彼女はきっと、蛭魔妖一を知らないのだろう。この世界の、人間ではないのだから。引っ越してきた時期を考えて宝華梨々は泥門デビルバッツの優勝のニュースや事実を知らない。今までの行動を見る限り、知っているのはテニス部のメンツだけだろう。


「菊丸英二、海堂薫、桃城武」
「「「!」」」
「俺の妹が、世話になったなァ?」
「「「ッ!」」」


3人には思い当たる節があるのだろう。もちろん私にだってある。


「妹って、まさか、」
『妖兄、今はそんなことどうだっていいよ』
「俺はよくねぇんだよ。妹殴られて黙ってられっか。今まで我慢してたんだよ。分かれ馬鹿」


コツンと頭を小突かれる。こうしてオープンに妖兄の素の姿が見れて私は嬉しい限りだ。

そして私もワックスを使って前髪を書き上げる。そして度の入っていない眼鏡を投げ捨てる。


『改めて。蛭魔妖一の妹の蛭魔未久です。まったくいいかげんにしろよこの尻軽女が。これ以上お前の三文芝居が通用するとでも思ってんのか?あ?』
「なっ!?」
「あれが、マジで、あの、」
「蛭魔未久?」
『今はンなこたァどうでもいいの。さっき流したこの映像は全部本物で、その音声も全部本物。なんならこれで確かめれば?』


私は手に持っていた録音機のひとつを忍足侑士に投げ渡した。忍足侑士はおもむろにスイッチを入れる。



『あの、宝華先輩』
「なぁに?」
『何故先輩はドリンク作りなどをなさらないんですか?洗濯や掃除も』
「なぁに?文句でもあるのぉ?」
『いえ、文句といいますか、マネージャーなのにマネージャーの仕事をしてないといいますか』
「梨々はいーの!梨々が応援すればみんなやる気になるんだしぃ?それでいいじゃない」
『そ、そんな。だったら別にマネージャーじゃなくたって……』
「アンタ、頭悪いんじゃないの?少し考えればわかるじゃない。マネージャーの方がみんなに近づけるからよ!ま、そんなことしなくたってみんなは梨々の虜だけどねッ」
『そんな理由でっ』
「あーもう!うるさいわね!アンタは梨々のために裏で頑張ってればいいの!お姫様は梨々だけでいいの!せっかく逆ハー補正もつけて可愛くしてもらったんだからね!」



氷帝の部室での出来事を録音したものだ。


「これ、は、」
「梨々、これって、」


疑惑の目を投げ始める騙されていたメンバー。


『そうそう。さっきの映像が信じられない人に朗報ですよ。一日目のできごと、覚えてますか?』
「一日、目?」
『はい。私が宝華梨々を殴ったとかいう出来事です』


一日目の午後。マネージャー室であった出来事。なんでも、私が宝華梨々を殴ったとかで悲鳴を上げて近くのコートにいたメンバーが集まってくるという事態になったアレだ。


『あの時、宝華梨々の頬は赤くなってましたね』
「せ、せや!」
「やっぱりあの時はお前が殴ったんじゃねぇか!」
『赤くなってましたよ。確かに。あの腫れ方なら殴られたや叩かれたのでしょうけど……おかしくなかったですか?』
「は?」
『宝華梨々の頬、右頬が腫れてませんでした?』
「え、」
「あ、確かに、」
「それがどうしたんや!」
『私は右利きなので、仮に殴ったとしても右で殴るので腫れるとしたら左頬が腫れるはずじゃないですか?』
「!」
『自分の利き腕で自分のことを殴れば、別ですけど。あのさっきの映像のように』


どんどん膨らむ宝華梨々への疑念。その疑いの目はすべてが宝華梨々へと注がれていた。

そして、宝華梨々が口を開く。


「そうよ。あの映像はぜぇんぶ本物!」


開き直ったように甲高い声をあげる宝華梨々はさながら、化物のようだった。



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