レンリツ方程式 | ナノ





見事に男5人を伸したジロー先輩は私に抱きついてきた。


「大丈夫?変なことされてねぇ??」
『まだまだ未遂でした。ジロー先輩、ありがとうございました』
「ホント、良かったC……」
「ジロー、とりあえず未久を着替えさせろ」
「あ、」


私はまだタオルを巻いたままの状態でした。


「蛭魔妖一に話は聞いていたが、こんな奴らが紛れ込むとはな」


着替えを終えた私たちが今いるのは一階にある空き部屋の1つだった。そこには私と跡部さん、ジロー先輩と妖兄がいる。あとはパンツ一丁で縛り上げられた男が5人。ボコボコにされたのがよほど堪えたのか、勃ったなんて発言してたやつももう萎えてしまったらしい。ご愁傷様です。


「いくら宝華梨々に頼まれたからとは言え、俺の妹に手ぇ出そうとするとはな。社会的に存在も抹殺してやる」
「「「「「ひっ」」」」」


妖兄の発言に縮こまる5人。


『でもま、取り出せる情報はこってり絞り出そうよ、妖兄』
「あぁ」


お前らやっぱり兄妹なんだな、という跡部さんの呟きはさて置き、私と妖兄は尋問を開始した。

こいつらは氷帝とは割と近い位置にある所謂「バカ校」に通う高校生でやはり金で釣られたらしい。そしてこの5人の中でのリーダー格である男(私に馬乗りしたやつ)は宝華梨々としっかりかっちり関係も持っているとのこと。

合宿が終わったあとに各自金を貰う予定になっていたらしく、一人5万支払われる予定だったらしい。私を犯して5万とは、随分安い話だ。


よくよく話を聞き出せば、こいつら以外にも宝華梨々にはつながりがあるようだ。よくもまああんなクソ忙しい氷帝男子テニス部のマネージャーを勤めながらそんなことができたものだ。

ま、宝華梨々は仕事など一切していないわけだけれど。


「胸糞悪い女だな、宝華梨々」
「ほんとだCー!」
「こいつらどうする?警察にでも突き出すか?」
「「「「「!」」」」」
「ま、レイプは立派な犯罪だしな。どうする?未久?」
『警察に突き出してもいいけどそのあとがめんどくさいじゃん?いろいろ事情聴取とか書類書かされたりとか。だから別にいいよ』


私がそういえば目の前の男たちは安堵の表情になる。

誰が許すって言ったよバーカ。


『だから、妖兄にあげるよ。存分にコキ使ってあげて』
「おー気前がいいじゃねえか、未久」


そういって悪魔のような笑みを浮かべる妖兄。きっと奴隷の如く扱われてボロ雑巾になるまで使われるのだろう。ま、自業自得だ。


『私は今からお仕事だしねー』
「編集か。今青学の乾と立海の柳、四天宝寺の財前も手伝ってる」
『乾さんと柳さん、それに光が……?』


私がこれからやるはずだった仕事とは、明日のためのビデオと音声の編集だった。明日、各学校が帰る前やる大イベント。そのための準備だ。


「ああ、興味深いとか言ってあのデータマン共はな。財前は得意だからってな」
『そっか……』
「明日は、どうすればいい?」


跡部さんが私に訪ねてくる。


『明日の8時に食堂にみんなを集めてください。そこですべてを終わらせます』
「わかった」


跡部さんは真剣な顔で頷いた。しかし隣にいるジロー先輩が浮かない顔をしている。


『ジロー先輩?』
「ねえ、未久。アイツがいなくなったら、テニス部やめちゃうの?」
『まあ、その予定ですけど』
「なんで?」
『な、なんでって、いる理由がないじゃないですか』
「俺は未久にいてほしいCー!それじゃだめなわけ?」
「ジロー、お前、」


眉を下げ悲しそうに訴えてくるジロー先輩に私は言葉を失う。

なんで?私だって宝華梨々と変わらない、テニス部にとっての異物なのに。彼らの日常も私自身の日常も壊し続けているのが今の関係。そんな関係をこれからも続けていく理由なんてない。そのはずなのに、


『私は、ジロー先輩が思っているほどいい奴じゃないから』
「違う!未久はスゲーいい奴だC!」
『それは表の私しか見たことがないからそんなことが言えるんですよ』
「表も裏もねぇよ!未久は未久だろ!?」
『ッ』


ジロー先輩の真っ直ぐな言葉に私は言葉を詰まらせる。でも、


『私は最低な人間です。やろうと思えば跡部財閥くらい潰せるんです。小さな国ならきっと簡単に潰せます。そんな人間です』
「できるとするは違うC!」
『やりかねない、と言ったら?』
「!」
『今は妖兄がいるから、まだまだ保っていられてる。でも、もし仮に、妖兄がいなくなるようなことがあれば。私は何をしでかすかわからない不安定な人間なんです。所詮私は誰かに縋って生きているに過ぎない』


萩ちゃんや妖兄を理由に快楽を求める私はそれらを失えばただの動物へと成り下がる。理性なんてない、そんな生き物に。


「じゃあ俺だって未久を支えるCー!」
『っ!?』
「それで問題ねぇじゃん?」
『ジロー先輩、貴方って人は……』


やられた、としか言い様がない。屈託のない蒲公英のような笑顔に私の毒気は吸い取られている気がする。


『まあ……考えておきます』
「マジマジ!?」
『ジロー先輩のその笑顔に免じて、ですけど』




黄色い蒲公英



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ヒロインちゃんの情緒が不安定すぎて泣ける


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