レンリツ方程式 | ナノ






※微性的表現注意



昨日ほどではないが突き刺すような日差し。上下白いジャージに身を包み私はせっせと働いていた。頭には何故か弦一郎の帽子。さっきむりやり被らされた。大きくてたまに前が見えなくなるのだけど。


現在私が担当している第3コートではAチーム対Cチームのダブルスが行われておりAチームは忍足侑士、菊丸英二ペア。Cチームは白石蔵之介、切原赤也ペアだ。現在ゲームカウント0−4で、Cチームリード。審判はDチームの乾さんが勤めている。もうひとつのコートは今は空いていて、ウォームアップに使用されている。


「蔵りんも調子良さそうやし、余裕やねえ」
「そうやなあ」


コート脇では小春さんと小石川さんが試合観戦をしていた。


『お二人共、お疲れ様です』
「おお、お疲れさん」
「未久ちゃんこそ、お疲れさん。どうや?蔵りんのバイブルテニスは」
『すごく基本に忠実って感じですね。あまりテニスには詳しくないですけど見てて綺麗だなって思います』


どんなテニスをすればいい試合になるのか、それは素人同然の私にはわからない。けれど白石さんのプレーがとても綺麗で見ていて気持ちがいいものだということはわかる。


『ここにドリンクおいておきますね。観戦といえど暑いですから水分補給こまめにお願いします』
「おん」
「じゃあ試合が終わった4人にも渡しておくわ」
『よろしくお願いします』


ドリンクボトル6本置いて違うコートの様子も見に行くことにした。


足を運んだのは第4コート。ここのコート担当は萩ちゃんだけど、萩ちゃんにも試合の予定がある。今はBチーム対Cチームのシングルスが行われており2つあるコートがどちらも使われていた。

向かって右側のコートでは不二さん対跡部さん。向かって左側では向日さん対光だ。それぞれ審判はAチームの雅治さんと宍戸さんが勤めていた。


『萩ちゃん』


木陰でストレッチをしていた萩ちゃんに声をかければストレッチを手伝っていた若も一緒に顔を上げた。


「未久。お疲れ様だね」
『ううん。試合は次だったっけ?』
「あぁ」
『これ、ここのコートのドリンクとタオル』
「ありがと、未久」
『いいえ』
「未久、それは立海の真田さんの帽子か?」


若は少し顔をしかめながらそう聞いてきた。


『うん。さっきあったら被ってろって言われて。ちょっと大きいんだよね』
「そうか、」


何か言いたげだったがそのまま口をつぐんだので余計な詮索はしないことにした。丁度片方の試合が終わったようで萩ちゃんは立ち上がった。


「じゃあ行ってこようかな」
『いってらっしゃい、萩ちゃん』
「うん。あ、試合が終わった跡部と不二にドリンク渡しておいて。あと、審判してた仁王にも」
『うん』


それだけ言い残すと木に立てかけていたラケットを手にしてコートへと入っていった。私はカゴからドリンクボトルを3本、そしてタオルを3枚とるとコートから出てきた3人に手渡した。


『お疲れ様です』
「あぁ」
「フフッ、ありがとう、未久ちゃん」
「プリッ」


試合は跡部さんが勝ったようで跡部さんは機嫌が良さそうだ。


「俺様に試合、見ていたか?あーん?」
『少し、ですが。なかなか攻撃的なテニスをするんですね』
「まぁな。といっても不二相手じゃ中々破滅への輪舞曲は打てなかったが……」
「お世辞はいいよ、跡部」
「ケッ、食えねえ男だ」


そう言ってタオルで汗を拭きながら2人は歩いて行った。残ったのは私と雅治さん。


「……蛭魔妖一から話は聞いてるぜよ」
『はぁ……あの話ね』
「これからドリンクの補充にマネージャー室戻るんじゃろ?俺も一緒にいくナリ」


それから今日の行動は基本的に2人以上で行動していた。昼食を作るときも光が傍にいたし、洗濯中はちーちゃんがそばで昼寝をしていた。コート整備も白石さんが手伝ってくれたし、夕食の支度の時は幸村さんと柳さんとお話しながらだった。後片付けの時も妖兄が傍にいた。

そしていま私は、ひとりである。


場所は大浴場。ひとりなのは当たり前だ。この合宿所にいる女子は自分を含め3人。宝華梨々は練習が終わるなり入るし先程布川南さんの入浴も終わった。時刻は10時を過ぎたあたり。

私にはこれから長い長い編集作業が待っている。それまでのひと時の休憩がこの入浴。一人で入りたいが為に今の時間だ。

しかし、だ。

脱衣所に気配を感じる。人数は5人といったところか。

私は脱衣所への扉を凝視しながら持ち込んだケータイでメールを作成した。出来るだけ多くの人にメールを送りたい。とりあえず見ずともメールを送信できる妖兄、そしてグループ「テニス部」の中で一番上にある人とそのしたにある人にもメールを作成。誰だったかは定かではないけれど、味方の人のメアドしか持っていないから問題はない。

『(ただいまだいよくじょう。だついじょにけはい。しきゅうおうえんをたのむ)』

うまくは打てたと思うが変換したときに意味がわからなくなっても困るので無変換で送信する。大浴場は1階。妖兄がいるのは4階。ここまで来るのに最低でも5分はかかる。

とりあえず私はお湯から出て置いておいたバスタオルを体に巻いた。そして逃げ道が2つ以上ある物陰に隠れ、置いてあった洗面器を一つ手にした。


ガラリ、扉が開いた。


「さてと、いるんだろ?」
「声出してどうするよばーか」
「ん?浴槽にはいねえな」
「着替えはあった。こん中にゃいる」
「こっちか?」


近づいてくる足音。幸運なことに5人は同じ方向から来てくれるようだ。これならもう片方から逃走を図れる。


「いたぜ!」
「ククッ、こんなとこにいたか」


私はとっさに手にしていた洗面器を投げる。それは一人の男に命中。そしてその男を巻き添えにもう1人が倒れる。ほかの3人は1秒ほど思考を停止させている。その1秒が重要なのだ。

私は扉に向かって走った。


「待てッ!こんのアマっ!」
「ブチ犯す」


扉を開き脱衣所へと逃げる。急いで閉めて鍵をかけようとする。鍵は上から下に下ろすタイプで力を加える、が閉まらない。


『ッ』


どうやら湿気や熱気で変形、サビを生じていて鍵が閉まらないようだ。

どうする?この格好で外へと飛び出す?どうする?いっそ暴力に走ってこいつらを伸す?

悩んでいるうちにすでに男たちは扉まで来ていて、私と男たちの力比べになる。


「クソアマぁ!!」
「なめんじゃねえよ!」
『クッソ……』


いくら私が人並み以上の運動神経の持ち主であったとしても、男3人がかかりを相手では限界があった。力負けした私は扉の開く勢いに負けて尻餅をつく。受身はとっさにとったが腰を打ち付けた。痛い。


「よくもやってくれたな」
『っ』


1人が私に馬乗りになる。重い。

5人の顔をよくよく見ればどの面も頭悪そうに見えた。金で釣られたといった感じがぷんぷんする。

と、ここまで冷静に考えるけれど内心は焦っている。頭が悪い奴らだからこそ何をしてくるかわからない。ただただ欲望に身を任せもう突っ込んでくる可能性だってないことはない。

メールを送ってから何分が経っただろうか。わからない。


「よく見りゃ上玉だぜ」
「顔はそんなによくねぇっつってたが、いいじゃねぇの」
「俺もう勃っちまったぜ」
「ばーか」


会話が下品で仕方ない。品のない男は大嫌いだ。妖兄に品があるかと言われれば答えきれないが。

馬乗りになっていた男が私の首筋に顔を近づけてきた。


『ッ!』
「風呂入ってたからだろうな、いい匂いすんぜ」


気持ちが悪い……ッ!ほかの四人もそれぞれ私の四肢を押さえつけながらいやらしい手つきで撫で上げてくる。

その時だった。


「何してんだC―ッ」


扉を開けた人物は私に馬乗りしてる男に見事な蹴りを食らわせ、ほかの4人にもストレートを決めていった。


『ジロー、先輩』


グループ「テニス部」で一番上なのは、芥川慈郎だ。そしてその次なのが……


「未久!!」
「テメェら、覚悟は出来てんだろうな?あーん?」


跡部景吾。だったりする。

ジロー先輩と妖兄は見事に男5人をボコボコにし、その間跡部さんは私に自身が来ていた上着をかけて私の肩を抱いていた。

にしてもジロー先輩、強すぎ……。




危機と救世主




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下品になってしまいました。すみません。


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