『サリシノハラ』で柳生比呂士 ※柳生が普通に学校にミュージックプレイヤーを持ち込んでいます。 幼馴染というには少し遠く、親友というのも烏滸がましい。でも知り合いよりも友達よりも格上で、ただのクラスメイトにしては仲がいい。恋人かと問われれば、首を横に振る。 彼女とは、そんな関係でした。 どちらかと言えば大人しい方に分類される彼女が、スポットライトを受けることになったのがおよそ2ヶ月前。そんな彼女の声が収録されたCDが世の中に発信されたのがおよそ2週間前。 初めは現実味なんてものは皆無でした。でもこうしてイヤホンを通して聞こえてくるのは間違いなく彼女の歌声で。 『比呂士』 「…ナマエ」 『何聴いてるの?』 肩を叩き声をかけ、私の顔を覗き込んでくる彼女は紛れもなく上記で説明した彼女、ナマエで。20cmほどある身長差。私に視線を合わせようと顔を上げ、どこか他のしげなナマエ。 「さぁ、なんでしょうか」 『クラシックとか?』 「そうですね」 『もう!はっきりしてよ』 学校指定のワンピース型の制服のおかげか、さほど短くないスカート。そんなスカートから出ている脚には清楚な白い靴下。 そんな彼女が数々の装飾を施されたエプロンスカートを着て、今週末にライブを行うらしい。 「ナマエ」 『なぁに?』 「本を、返したいと思っているのですが。次はいつお休みなんですか?」 『んー……ライブのせいで明日から学校お休みなんだよね。ライブが終わったら、かな』 「そうですか……」 『本返すのはいつでもいいよ?』 「そう言って頂けますと、嬉しいです」 「ナマエー!」 『友達呼んでるからいくね!』 「廊下は走らないでくださいね」 そう言って踵を返した彼女。スカートがふんわりと揺れる。 どんどん離れていく彼女との距離。 まるで、今の私と彼女の心の距離のように見えて仕方がなった。 ――――――――― 『サリシノハラ』byみきとP ボカロ曲からです。 恋人ではない、けどきっと両片想いなヒロインと柳生。 しかしヒロインはアイドルになってしまって、せっかくつまり始めていた距離が開いてしまう。 そんな感じですかね。 あくまでネタなのでこの程度で。 next |