私は私の知るすべてを話した。わかる範囲のことを私の言葉で的確に伝わるように。何も隠さずすべてを。
アルケイン様は私の話の腰を折ることなく聞いてくださった。
『……こんなところです』
「話してくれてありがとう。辛かっただろう?」
『っ!』
なんで、なんで……
『なんで……?』
「?」
『なんで優しくしてくださるのですか……っ?私はテオドアの国王であるオフィーリアの実の娘なのですよ!?なのに、何故、何故……っ?』
「何故、優しくするのか……ですか。ユーリアに優しくするのに理由が必要なのかい?僕が君に優しくするのは、ユーリアだからだ」
『え……』
「君が誰の娘だろうが、どこの生まれだろうがユーリアはユーリアだ。そうだろう?」
『あ、あッ……アルケイン様ぁぁあ!』
溢れ出てくる感情をコントロールできなくて、あまりにも優しい言葉ばかりをくれる目の前の紳士に私はしがみついて、感情を涙という形にした。
しがみつく私は引き剥がすこともなく優しく包み込んでくれる腕。
「君はひとりじゃないです。僕がいます……」
私はそのままアルケイン様の腕の中で泣き続けた。そして泣き疲れた私はそのまま眠ってしまった。
アルケイン様を、確実に感じながら。
目が覚めればそこには勿論アルケイン様がいて、私の髪の毛を梳いていた。上質な布でできた手袋ではなく、彼自身の熱を持たない冷たい掌が私に触れていて、その事実に私は嬉しくて一粒だけ涙を流した。
「おはよう、ユーリア」
『おはようございます、アルケイン様。ずっと、こうしていてくださったんですか?』
「ええ」
『申し訳ありません……』
「なぜ謝るんですか。僕自身がしたくてしていたんです。ずっとこうして、ユーリアに触れていたかったんです」
『っ……!』
私は自分の頬が、身体が熱くなっていくのを感じていた。
「クククっ……じゃあ、帰りましょうか」
伸ばされた手。私はその手を掴み、部屋を出た。
「……帰るのか?」
部屋を出ればそこにはフェルト様。
『フェルト様、お世話になりました』
「フン、俺は何もしていない」
ぶっきらぼうに言葉を放ち、顔を背けるフェルト様。私は知っている。この行動が照れ隠しだということを。
『感謝しております』
「ッ……ユーリア」
『はい』
こちらを向き直ったフェルト様は私に近づき私の頭を乱暴に撫でた。
「何かあれば俺を頼れ。そこの不死者よりも数段役に立つぞ?」
『フフッ、そうですね』
「え!?ユーリア、そんなこと思っていたの!?」
悲しみを含んだ声でアルケイン様が声を荒げる。明らかに落ち込んでいるようだ。
「言うようになったな。流石、俺が見込んだだけはある」
『光栄の至りです』
クククと笑うフェルト様。しかし、笑うのをやめ真剣な眼差し私を射抜く。
「ギギのことだ。お前のことを今の段階でオフィーリアに言うことはないだろう。ただ気をつけろ。お前は確かにあの頃とは変わったが、いつバレてもおかしくはない」
『バレても、大丈夫じゃあ……』
「あの女……オフィーリアは自国のためならなんだってしてくるぞ」
『!』
「気をつけろ。いいな?」
『はい』
私は頷いた。それを見届けたアルケイン様は私の左隣に立つとそのまま私の左手を取った。
「じゃあ、帰りましょうか」
『はい』
私の故郷、ネクロス王国へ。