ベッドの上で膝を抱えてうずくまる。
どうしたらいいのかわからない。でも、こんなことをネクロスの人に相談できない。わからない。
そんな時だった。部屋の扉が静かに叩かれた。
『……はい』
小さく返事をする。聞こえているかはわからない。
でも、扉の外にいる人には聞こえていたのかゆっくりと扉は開いた。
扉は完全には開かず途中で止まり、扉の影から声がした。
「ユーリア?」
『あ、アルケイン、さま……』
「……入ってもいいかい?」
『……どうぞ』
私がそう言うとアルケイン様は姿を見せ、扉は閉められた。
まだ一日しか経っていないはずなのに、アルケイン様の顔を久しぶりに見た気がしてすごくすごく安心できた。それと同時に、私にとってアルケイン様の存在がどれだけ大きいかを知った。
もし、これでネクロスにいられなくなってしまったら、私はアルケイン様に会えなくなってしまうのだろう。そう考えたら怖くてたまらなかった。
「大丈夫かい?ユーリア?」
『大丈夫ですよ、アルケイン様。ご心配をおかけしました』
それでも、アルケイン様には心配をかけたくなくて私は笑顔を作った。
……うまく笑えた自信はないが。
「心配くらいはさせてください、ユーリア。それに、大丈夫などという嘘、つかないでください」
『っ……』
いつにない真剣な声色のアルケイン様が言葉を紡いでゆく。
「そんな嘘が僕に通じるわけがないだろう?バレバレですよ」
『いいえ!私は、私は大丈夫「なわけないでしょう」……っ!』
私の声を遮って、私を否定する。
「泣きそうな顔していますよ、ユーリア……」
ハッとした私は膝に顔を埋めた。痛いくらいに、腕を握った。
気配で感じる、アルケイン様が近づいてくる感覚。彼は気配が消せる。でも、きっと、わざと気配を消さずに私に近づいてきているのだと思う。
気がつけば、もう香りを感じられるほどにアルケイン様がそばにいて。ギシッとベッドが悲鳴を上げると同時に私はアルケイン様に包まれた。
『アルケイン、さ、ま……?』
「泣きたい時は泣くといい。いくらでも僕の胸を貸します。僕は、君が無理をして笑顔を作るのを見たくない……」
『わたし、は……』
「話したくないのならば話さなくてもいい。でも、一人で悩んでこんなふうに抱え込むな。君は……ユーリアはひとりじゃないから」
『っ!』
アルケイン様の言葉は私の心に染み渡った。
いつでもこの方は、私の欲しい言葉ばかりをくださる。優しくて、暖かくて……
話そう。私はそう、決意した。
アルケイン様には、私のことを知っていて欲しい。それで嫌われて、拒絶されてしまうならその時は……
『アルケイン様……』
「なんでしょう?」
『お話を、聞いていただけますか?』
「勿論」
→