フェルト様から真実を聞いたその日の夜。ベッドに潜り込んだはいいが一睡もできずに朝を迎えてしまった。
私は……どうすればいいのだろうか。
母親に、国に捨てられ、フェルト様に拾われて、アルケイン様やカイゼル様……ネクロスに育てられた私。
今の私のとって一番大切なものはネクロスだ。
でも……
『私には、テオドアの国王の血が流れている……テオドアの巫女の血が流れている……』
テオドアで生まれた一般市民だったならまだなんとでもなった。
でも、違う。国王なのだ。
これがみんなに知られてしまえば、きっと……
『私は、ネクロスに居られない』
いいや、違う。
『ネクロスに、居ていけない存在なんだ……』
そう考えた途端、今までのネクロスでの思い出が浮かんできた。
初めてアルケイン様に出会った日のこと。
確か怖かったんだと思う。仮面で顔が見えなくて、何を考えているかわからなかったから。
そして、カイゼル様に出会った。
真っ赤な髪の毛を結って私に言い寄ってきたのは今でも覚えている。初めは女の子だと思ってて怒られた記憶もある。
城内に親が住んでいる子も多くて、所謂幼馴染もできた。
楽しくて、嬉しくて、
私はネクロスに恩返しがしたくなったんだ。
だからアルケイン様に剣を習って、他の物も試したら弓の方が自分には合っていて、だから弓士を目指して……勿論魔術も扱えるようにした。
そして士官学校にも通った。そこで、仲間というものを知った。
たくさん浮かんでは消える思い出。そのどれにも欠かせない人物が、ひとり。
『アルケイン様……っ!』
私を引き取ってくれて、育ててくれて。いつもどこからか見守ってくださっていた。沢山のことを教えてもらった……。
私は、貴方に、ネクロスに、恩返しができましたか?
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