翌日。私は謁見の間にてカイゼル様に謁見していた。玉座に座るカイゼル様に対して、低い位置で膝をつく私。
カイゼル様は足を組み直すと、こういった。
「できるだけ早く帰って来い。わかったな?」
『はい、カイゼル様』
私の返事を聞くと、カイゼル様はため息をひとつ吐き出した。
「……帰ってこいよ」
『!』
彼らしくもない小さな声。私がその声を聞き逃すはずもなく。
『……勿論でございます。私の帰るところは此処、ネクロス王国以外にはございません』
顔を上げ、彼の紅の両目を見つめて私はそう言い放った。
私の回答に満足したのか、いつもどおりその口角を持ち上げた。
「そうだ。必ず帰って来い!」
『御意のままに』
私は今一度、カイゼル様と目を合わせて背を向けた。
謁見を終えた私はすぐさま荷物を持ちアルケイン様が待っているであろう城門へと向かった。
『お待たせいたしました、アルケイン様』
「準備はいいかい?」
『はい』
「じゃあ行こうか。アルゴス側にももう連絡入っているはずです」
そうして私とアルケイン様は用意された馬に跨って一路、アルゴス帝国へと向かった。
アルゴス帝国はネクロス王国から見て、南の方に位置する。川と森に囲まれた比較的暖かい土地だ。
そんなアルゴス帝国の城下町も、ネクロスの城下町同様に賑わっている。しかし国柄か土地柄か、その賑わいの持つ雰囲気は全く別のものだ。
そんな城下町に足を踏み入れてすぐに、アルゴス兵らしき男性が声をかけてきた。
「ネクロス王国将軍アルエルゴ卿。そして、ネクロス王国兵、ユーリア殿ですね?」
「いかにも」
「私はフェルト将軍の遣いの者です。案内するようにとフェルト将軍より仰せつかっております」
「そうですか。では、行きましょうかユーリア」
私とアルケイン様は男性の後をついていった。
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