戦いは熾烈を極めた。
私も割と長く戦場に立ってきたが、ここまで激しい戦いは数えられるほどしかない。
砂漠という場所は領地としてはあまり使用用途のない土地であるが、国境としては役割を十分に果たしてくれる土地である。
『っ!』
弓を構えていた私の足元すれすれに矢が飛んでくる。
流石はテオドア、というべきだろうか。弓兵が良く育っていると見える。
私は指示を出しながら一通り攻撃を終えると、上司を探した。
よく見れば遠くでアルケイン様がいつものように戦場を散歩しているのが伺えた。
『……5本くらい、矢が刺さってますよ……アルケイン様……』
そんな呑気なことを考えていると上空に暗雲が立ち込めていくのが見えた。
これは……
『雷系の魔術、か?』
その間にも雲どんどん大きくなってゆく。
『総員退避っ!魔術来るぞっ!!』
私がそう声を張り上げれば、退避を開始する兵士たち。
すると、眩い光を発しながら稲妻が暗雲から地へと落ちるのが見えた。それと同時に鼓膜を破りそうな轟音が鳴り響く。
『ッ……なんて大きな稲妻だ……こんな魔術が使えるなんて……』
左手が自然と震えだす。それを抑えるために爪を手のひらへと食い込ませた。恐怖よりも痛みの方が上回るから。
『各隊点呼を行え!怪我人は協力してテントへ!』
そうすれば各隊の隊長が点呼を始め、各自が協力し怪我人を運び始める。しかしザッと見たところ重症患者はいないようだ。
「ユーリア!」
遠くの方から名を呼ばれ振り返れば、我が将軍が大手を振って駆け寄ってきた。
『アルケイン様……ご無事で何よりです!』
「ユーリアもね。ユーリアのおかげで被害は最小限で済みました。ありがとう」
『いいえ。しかし、この魔術……』
「多分、テオドアの将軍の魔術でしょうねぇ」
『こんな、こんな大きな魔術を……っ』
広範囲且つ、高威力……将軍の位を持っているだけある。
「でもまぁ、フェルトさんの雷を受けるよりは……」
『……100倍マシ、です』
私もアルケイン様も、とあるひとりの魔女を思い浮かべ肩をすくめた。
「はぁ、弓士の方はどうだい?」
『私の隊はほぼ無傷です』
「よろしい。じゃあ僕についてくるんだ。崩しにかかる」
『かしこまりました。行くぞ!!』
「「「はいっ!」」」
私と私の隊の兵は弓と矢筒を背負い直し、アルケイン様の後をついて行った。
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