『っは!……夢、か……』
まだ窓の外は真っ暗で、灯りの灯っていない部屋の中は暗闇に包まれている。
シーツは汗で濡れており気持ちが悪い。
『シャワー、浴びよう』
最近また見出した悪夢。きっとあれは私の過去なのだと思う。
母と思わしき人物に嫌われ、挙げ句の果てに捨てられる夢……。
私は幼い頃の記憶が曖昧で、母の顔は愚か名前も知らない。今持っている記憶が鮮明なのは拾われた直後から。
私はどうやら精神的ショックから精神が脆くなっており、これ以上の崩壊を防ぐために自己防衛本能が働き過去の記憶を無理矢理押さえ込んでいるらしい。
だから、こうしてたまに夢として過去らしき映像を見るのだ。
それで得られたのは、そう、
私は母親から嫌われており、捨てられたということ。そんな嫌われていた私にも、傍には私のことを想ってくれていた人がひとりいたこと。
それだけ。
思い出したいと思ったことはない。
過去にとらわれるような生き方はしたくなかったから。
なにより、
今のこの幸せを壊したくなかったから。
それほどまでに今の生活は幸せに満ち溢れている。
『ふぅ……』
シャワーを浴び終えれば、ネクロスにも朝がやってきたようだ。締め切られたカーテンの隙間から眩い光が差し込んできている。そして、ネクロス城内も次第に騒がしくなり始めた。
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