私はあのあとすぐさま家に帰って部屋にこもった。
あの子のこともムカついたけど、何より自分に。
あの子も大概わがままだったけど、私だって十分わがまま。
わかってた。わかってたけど、くやしかった。
ぽたり、と枕にシミができる。ああ、ほんとになんでこんなに私は弱いんだろう。
『総司……』
幼馴染がこんなに苦しいなんて、知らなかったんだ。昔は嬉しかった。こんな幼馴染がいる私自身が大好きだった。でも、今は違う。自分が大嫌い。こんな感情抱いて、総司に依存してる自分が醜くて。
『総司、』
「何?」
『!?』
名前を呼んだら返事されて、驚くに決まってる。顔を上げたら扉のところに総司。
『なんで、いるの?』
「なんでって言われても」
『デリカシーないよね』
「……ねえ、何で泣いてたの?」
『っ』
総司がゆっくりとこっちに近づいてくる。
『こ、こないでっ』
「やだ」
『っう』
総司の大きな手が私の顔に触れて、親指がそっと私の目尻を拭った。
「目、真っ赤だよ」
『……』
「泣いていいよ。ホラ」
ぐっと頭を押されて目の前には総司の肩。
『っ、ふぅ……総司、そう、じっ』
「ん」
私は総司の肩口に顔をうずめ、できる限り声を押し殺して泣いた。
『ごめ、総司、ごめんね……』
「なんで遥が謝るの」
『だって、私、』
「謝るのは僕。ごめんね、遥。辛い想いさせちゃって」
『っ?』
「遥、好きだよ」
『……え』
一瞬、何を言っているのかわからなかった。私は顔を上げて総司の綺麗な翡翠色の瞳をのぞきこむ。
「好き、好きなんだよ遥」
『え、だ、だって総司、彼女が……』
「今の彼女なら別れてきた。というか、今までだって好きで付き合ってたんじゃないんだ」
『どういう、こと?』
「遥の興味を引くため、かな?」
『は』
「彼女が出来たら、僕に興味が向くかなって思って。でも、ダメだったみたいだね。それどころか、そのせいでこうして遥を泣かせちゃった」
悲しそうに眉を寄せる総司。
私だって、総司にそんな顔させたくなんてなかったのに。やめて総司。そんな顔しないで。
「ごめんね、いきなり。でも覚えておいて。僕は君にことが好きだよ。覚えてくれてればいいから。別に返事とかは、」
『総司っ』
「?」
『ごめん。私も、臆病者だったから。だから、だからっ』
「遥……?」
『お願い、そんな、そんな悲しそうな顔しないでっ? 総司、好き……っ』
「!」
『私も、好きだからっ!だから、』
「それ、本当?」
『嘘なんてつくわけ!んぅっ』
感じる温もり。柔らかな感触。
「っ、んはっ、遥……」
『そ、じ……』
「その顔、反則」
そっと額に落とされる優しいキス。
「お互いにすれ違ってたんだね」
『そうだね』
「僕も遥も素直じゃないからかな」
『確かに』
「でも、もう遠慮いらないよね?」
『っ』
世界は君でいっぱいです。
end
prev / next