あたしにだって友達はいる。不二と幼馴染であることをなんとも思っていない友達が。それがあたしにとってどれだけ救いであるか、それはあたしにしかわからないだろう。


1年の時だったか。あの頃は特に酷かった。あたしが不二と幼馴染であることを知るやいなや群がる女の子。友達になろうと迫られ、不二を紹介しろと脅迫され、あろうことか不二の家まで連れて行けと言われる始末。嫌気がさした。

断れば文句を言われ、悪口を言われ、陰口を叩かれる。

あたしが、何かしただろか。

その前に、一度彼女らに辞書で友達という意味を引いてみることをおすすめしたい。切実にそう思った私は悪くないだろう。

2年にもなれば、あたしという人物像が学校で定着し、あたしに媚を売ろうとする人物はなりを潜めた。まあ、あえていなくなったという表現はしない。実際、今だってそう言った輩がいるのだから。


中学校生活最後のクラスで、あたしはあろうことか不二と一緒のクラスになってしまった。そして所謂、不二の大好きなグループもまた然り。



「笹原さん、ちょっと来てくれる?」
『……ここじゃできない話?』
「いいから来なさいよ」
「ほんと、生意気」
『……』



不二との登校を終えたあたしはこうして彼女らの餌食になる。



「また朝、一緒に登校してきたのね」
「あれほど止めろって言ったのに」
「その耳は飾りなのかしら」



その耳こそ飾りなのかと、あたしは心の中で呟いた。あたしは前に一度、彼女らにあたしの登校事情を説明した。いくらあたしが一緒に登校したくなくても、朝顔を合わせてしまうと自然に一緒に登校してしまうこと。いくらあたしが足を早めても、いくらあたしが遅く歩こうとも無駄なこと。全て。

それでもこうして性懲りもなくあたしに突っかかってくるあたり、学習能力がないのか鶏なのか暇なのか。これも口には出さないが。



「不二くんはしょうがなくアンタと登校してるの、わかる?」
「迷惑だって」
「なんでわからないの?馬鹿なの?」



迷惑なのはあんたらだ。

なぜわからない。馬鹿なの?全てあたしの台詞だ。


それも全て、彼女たちには伝わらないし、無駄なのだけれど。



「いい加減にしないとほんと、許さないからね」
「ほんとに」
「調子乗るんじゃないわよ」



そう言い残してその場を去る彼女たち。まったく、人を呼び出してこんなところまで引っ張ってきておいて、言いたいことだけ言いまくって逃げやがったよ。ほんと、ムカつく話。



鉄の棺でおりよ



もう抵抗なんてしない。

悪いの全てあたしだから。知ってる。