頬の腫れもひき、ようやく落ち着いたのは放課後。

あのあとの休み時間や昼休みは質問攻めにあって余計疲れた。

「どこいってたの?」とか「なにしてたの?」とか。ほんと皆の想像力には驚かされるというかなんというか、いい迷惑というか。なんだかなあ。


帰宅部である私は、部活に入っている友達と別れを告げひとり帰路へと着こうとしていた。

していた。



『……なにか用ですか』
「あんた、不二くんと一時間目何してたの?」



今度はこれか。これなのか。

内心もううんざりなんだ。クラスの友達とかに好奇心で聞かれるのとはまた違う。目の前の女の子の瞳は嫉妬で燃えている。本当にもううんざりなんですそういうの。



『優しい優しい不二くんが、怪我をしたあたしを保健室に連れて行ってくれた。それだけ』
「保健室に二人で……あんたまさか、」
『何』
「不二くんに手を出したんでしょ!」
『はぁ?!』



また強烈な子が来た。

本当に最近の子は想像力が豊かというか妄想が過ぎるというか、めちゃくちゃだ。



「最低っ!」
『だから、はぁ、もうやだ……』
「不二くんはそんな人じゃないのに!あんたなんかに、かわいそう!」



あんたの脳内の方が可愛そうだ。君の頭の中にはなんだ、お花畑か何かがあるのだろうか。もしかしたら西洋風のお城がドーンと建っているのかもしれない。そこにはきっといわゆる白馬の王子サマ風の不二がいるのだろう。

あたしの想像力も大概か。



『脳内妄想も大概にしてくれないかな。本当にそういうの困るんだよね』
「妄想っ!?」
『そうでしょ。あたしはただ不二が怪我をしたあたしを保健室に連れて行ってくれたってしか言ってないのにどうしてそこまで話が飛躍するわけ?』
「だ、だって、保健室の先生がいない保健室に二人きりとか……」
『少女漫画とかの読みすぎ』
「っ」
『あたしと不二はそんな関係じゃない。少なくともあたしは不二に対してそんな感情を持ってない。断言できる』
「なんで、あんなにかっこいいのに……」



ほんと、かわいそうな子だな。恋に恋してるというか。



『かっこいい人を好きにならなきゃいけない法律でもあるの?確かに不二はかっこいいよ。でもそれだけでしょ?』
「意味わかんない」
『いや、意味わかんないのはこっちだし』



てか、もう早く帰りたいんだけど。このままうだうだこんな押問答を繰り返すのだろうか。



「せんせー、こっちでなんか女子が言い争いみたいなのしてるんスけどー」
「っ!」



どこからかそんな声が聞こえてきて、目の前の女の子は肩を震わせると声とは逆の方に走り出した。否、逃げ出した。

とりあえずは、助かったとでも思っておこう。



ルヘン在住



好きって、なんだろう。