休日が終わり誰しもが憂鬱に道路を歩く。所謂週明けの月曜日。

憂鬱なのは私も例外ではない。学校が嫌なわけではないがやはりどこか足取りは重い。きっとこれが学生の性なのだと思う。


今日は一人で登校をし、足早に自分の教室へと向かう。荷物を机の上において私はトイレへと向かった。

手を洗っているとそこへやって来たのは3人組の女子。女子という生き物はどうしてこうも集団でいようとするのだろうか。どうでもいいけど。

私はその3人組を横目で一瞥しトイレをあとにしようとした。



「待ちなさいよ」
『……なに?あたしに何か用?』
「あんた、この間のテニス部の練習試合の帰り不二くんと一緒だったでしょ」



ほらね。だから嫌だったんだ。



『だったら?』
「あんたね、不二くんが迷惑してるのがわからないの!?」
「そうよ!」
『勘違いもいいかげんにして』
「勘違い?じゃああれはあんたじゃなかったとでもいうの?」
『そっちの勘違いじゃない』
「じゃあなんだっていうのよ!」
『なんであたしが不二に近づいたことになってるのよ』
「はぁ?」



こいつ何が言いたいんだ、とでもいうように顔をしかめさせる三人。あーあ、せっかくメイクで綺麗にしたって意味ないじゃん、それじゃ。



『あたしが不二に近づいたんじゃない。不二があたしに近づいたの』
「あんた、妄想も大概にしたら?」
「そうよ、不二くんがそんなことするわけないじゃない」
「アタシらバカにすんのも大概にしなさいよ!」
『じゃあ不二にでも聞けばいいじゃない。あたしの言葉がそんなにも信じられないなら』
「な、」
『なんなら話しかける手助けしてあげるわよ?』
「っ」
『話しかけられないんでしょ?あの不二を目の前にすると』
「アンタねぇ……っ!」



ぱしんと乾いた音がトイレで響いた。

熱い。顔が、頬が熱い。



「馬鹿にするなっていったでしょ!」
『馬鹿になんて、してない。あたしの言葉を信じなくて勝手に妄想して勝手にあたしを叩いたんでしょ』
「じゃあいいわよ!不二くんに聞きに行きましょうよ!」
『最初からそうして』



あたしは足早に教室へと戻り、不二のもとへと向かった。



『不二』
「あれ?どうしたの美希。珍しいね。それに左頬なんか赤くして、どうしたのさ」



そっとあたしの頬に伸びる手。冷たい不二のソレはあたしの熱をもった頬を撫でた。後ろから3つの殺気が飛んでくるのは気のせいではないだろう。



『そんなことよりこの間の練習試合の時のことなんだけど』
「なに?」
『……あんたたちが聞きなさいよ』



あたしは振り向いて相変わらず私を睨む3人に声をかけた。



「あのぉ、不二くん」
「この間の練習試合の帰り、笹原さんと帰ってたよね?」
「うん。それが?」
「それって、あの、」
「ああ、僕が誘ったんだよ」
「「「!」」」
「家の方向だって一緒だし、お礼とかもちゃんとしたかったから昇降口で待ち伏せをね」
「あ、え、えと、」
「そ、そうなんだ……」



不自然に視線をさまよわせる三人。自業自得だ。あたしはなんにも悪くない。



「じゃ、じゃあもう授業あるから!」
「じゃあね不二くん!」



ぱたぱたと廊下を走ってゆく三人。さながらしっぽを巻いて逃げる、だろうか。

まったくただでさえ憂鬱な月曜日だっていうのにさらに憂鬱になったよ。朝からこんなことばかりでほんとに疲れた。

私は知らず知らず溜息を吐いていた。



「大変だね」
『あんたのせいでしょ』



キッと不二をみやればそこにあるのはいつもと同じ笑み。楽しそうでなによりです。



「とりあえず、保健室行こうか」



拒否権など無いようにあたしの腕を引っ張り歩き出す不二。あたしの瞳に映る不二の背中からは何も読み取れなかった。



叫べ少年



どうせ、あたしの言葉なんて誰にも届かないんだ。