昼休み。

今日は珍しく朝に柳生から「今日、お昼一緒に食べませんか」と誘われて空き教室へと来ている。

最初の頃は屋上で食べてみたり、互いの教室で食べてみたりといろいろしたけれど、最近はこの空き教室で食べることが習慣付いた。

人は寄り付かないものの、定期的の掃除はされているのか埃っぽいということない落ち着く空間。



「すみません、待ちましたか?」
『ううん、別に』



眼鏡のブリッジをクイと押し上げて私の様子を伺う柳生。私が特に不機嫌でないと知ると音もなく近づいて私の正面の席へと座った。

私も彼も、家からお弁当を持ってくるタイプだ。



「今日の放課後のご予定は?」
『特になにもないよ?どうしたい?』
「いえ、今日の練習は長引きそうなので。暗くならないうちに帰ることが可能ならば、その方が良いかと思いまして」
『うーん、そうだね。そうするよ』
「わかりました。早めに帰ってくださいね」
『そんなに念を押さなくても』
「そう、でしょうか?」
『ふふふ』



困ったようにする柳生に思わず笑ってしまう。



「ごちそうさまでした」
『ごちそうさまでした』



彼に見習い私も両手を合わせて姿勢をよくする。



『……柳生、疲れてる?』
「いえ、そんなことは」
『……ううん、疲れてる。まだ昼休みあと20分もあるし、少し寝たら?』
「ですが、」
『5分前には起こすよ?』



紳士の誇りか、別の何かか。それは私にはわからないけれどなかなか首を縦に振らない。



「……眠らなくても、大丈夫なので、その……」
『?』
「……抱きしめても、いいでしょうか」



逆光レンズでその瞳を伺うことはできないけど、いたって真面目なその姿に私は断ることができなかった。



『柳生の頼みなら、しょうがないな』



そういうと、待っていましたとでも言うように抱きすくめられて。

決して細くはなく筋肉がしっかりと付いた柳生の腕が私の腰にまわり、彼自身の顔は私の首元に埋められている。

私も恐る恐る、彼へと腕をまわす。

そして、ほんの少し力を込めると、柳生の方も力を強めた。


まるで「はなさない」とでも言うように。



その吐息は誰のもの



首元にあたる吐息がやけにリアルだった。





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